リクの演奏技術
本日一話目。
実のところ、リクは思念波のコントロール技術はともかく、身体的な演奏技術の方は大したことが無い。うまく弾けないところは『サウンドメイカー』と『サウンドエフェクト』で補助しているし、そもそも最近は練習時間があまりとれていない。
もともと趣味で練習していたものだし(ほかの人造魂魄たちの管轄する分野の訓練や情報収集に時間を取られているため練習時間が少なかった)、なにより最近は霊視関係の仕事が増えすぎて、練習する時間もなかったのだ。
観客たちの盛り上がりをよそに、リクとリサの歯がゆさは大きくなっていた。かつて音楽家をしていた頃の技術を求めてしまい、魔法技術は大丈夫なのだが、身体技術の方が追い付かないのだ。
本気で演奏し、観客を楽しませようとしながらも、リクとリサはもっと後で練習しようという決意を新たにしていた。
2曲目が終わり、観客の盛り上がりは最高潮だった。
弾ける人自体が少ないとされる『雷鳴』を、リクはアレンジしてより高難度(観客たちにはそう聞こえた。実際使っている魔法技術が鬼畜レベルに難しいので、身体的な技術はともかく、間違ってはいない)でさらに格好よく演奏してみせたのだ。
盛り上がるなという方が難しい。
「ありがとうございました。2曲目『雷鳴』でした。結構格好よく盛り上がって引けたかなと思う反面、最近忙しくてうまく弾けなかったので来年のキサラギ祭、ミュージックフェスではもっと格好のいい『雷鳴』を披露したいと思います」
しかもリクのこのコメントだ。
嫌味か!という声もなくはなかったが、リクがまじめに言っていることに気が付いた1年A組の生徒の反応もあり、むしろどれだけ上を目指すのか?という逆に呆れた反応が広まっていた。
なお、喧嘩腰の生徒は心がおれたのか既に魔法実習室にいなかった。
「さて、時間的に次でラストになるかと思います。ラストは自分のオリジナル曲でもあり、初めて披露する曲でもある『ツバサ』――
文字通り、空を飛ぶ鳥の翼、空を自由に飛べる権利を与えてくれる翼をイメージして作りました。なかなか格好良い曲にできたと思いますので、どうぞ皆さん全員で楽しんでいきましょう!」
「「「「「「「「「「「「「「「おお!」」」」」」」」」」」」」」」
世界最高峰の霊視官として、のちに世界中に名を知られるようになるリクだが、実のところ、それ以上にリクは演奏家、美食家としての評価の方が有名であるのは、このキサラギ祭がきっかけと言われている。
これを機にリクは時間があれば本気でギターを練習するようになり、仕事の合間を縫ってはライブを行うようになった。
彼の演奏の人気は高く、彼が仕事でライブを行えない時期が続くと、彼に仕事を持ち込んだ会社や行政機関に批判が殺到するようになるほどで、晩年には彼に霊視官としての仕事を頼むものはほとんどいなくなった、というのはあまりにも有名な話である。
しかし、それはまだ先の話であり、リクはこれから霊視官として様々な事件に巻き込まれていくのであった。




