魔法の世界の音楽事情
時間がないので短め一話のみです。
ゴールデンウィークに書き溜めるのでご容赦をww
着々と後夜祭のスケジュールが進行していく中、舞台裏の緊張と不安が混じったなんとも言えない空気とともに、リクは自分が、そして『芸』をツカサ司る人造魂魄のリサがほのかな興奮を覚えているのを感じた。
リクの持ち時間は15分。なんでもリクに負けた3位のグループがごねて演奏しないと言っているらしく、(2年連続2位で今年こそは、と気合を入れていたら、登録もしていないリクに負けてごねたらしい)1位の生徒も、予選で歌った歌と本選で歌った歌の2曲しか練習していないとのことで、急遽、リクの担当時間が増えたのだ。
この世界では楽器演奏には魔法技術が必要であることもあり、音楽高校というものは存在しない。学校では魔法技術を磨き、演奏技術は雇った講師に教わる。
その上でコンクールに出て結果を残し音大に進む。
これが一般的な演奏家への道であるため、キサラギ第一高校の文化祭の1イベントとはいえ数少ない(一応は)公での演奏活動ということで出場する高校生たちはかなり本気なのだ。要するに文化祭のイベントとしては、かなりレベルが高いのである。
(ま、そんなことはどうでもいいけどね)
(せっかく舞台に上がるチャンスをけるなんて、バカな奴らです。ファンに対しても失礼ですし・・・)
普段は温和に見えるリサだが、その実、同業者(?)には結構厳しい。もっとも、リクもその意見には完全に同意するのだが・・・それに、リクはそれ以上に気がかりなことがあったのだ。
(ザク。疲労の回復具合はどう?)
(ふん。いいように使いやがって・・・・2時間連続でライブするとかじゃない限り問題ねえ。もっとも、普通にライブすればだがな)
(1つ前の世界では演奏することはあっても、この規模の観客に聞いてもらうことはありませんでしたからね。総勢約570人ぐらいですか・・・コンサートとしては多くはありませんが、帰っていってしまった人たちを抜いても結構残っていますね。気合も入ります)
(確かに・・・曲目はどうしようか)
(1曲目は有名どころの曲でいいでしょう。3位の選手が不穏な気配を漂わせているようですし、まずは実力を見せつけます。テンポもいいですし、後夜祭の雰囲気にはばっちりでしょう)
(なるほど・・・じゃあ2曲目はあえて、観客のリクエストに応えるか)
(別にいいですが・・何故?)
(確かにその方がよろしいかと。正直リサのサポートを受けて本気で歌うリクの歌は下手すれば録音と間違えられませんし。3位のおバカさんが難癖をつけてくるかもしれませんしね)
(聞けばわかると思いますが?まあ、ミオ姉さまとリク様がともにそうおっしゃるなら、そちらの方がいいでしょう。では3曲目は?)
(ここらで一発オリジナル曲いっとくか)
(よろしいので?)
(別に構わんだろ。この世界の音楽水準にあった曲なら問題ないだろ。下手なことすると似たような音楽ばかりの世界ばかり増えてつまらなくなるけどさ)
(ではそのように)
リクはリサが言葉では平静を装っていたが、かなり興奮しているのを感じた。
『芸』を司る人造魂魄、リサ。彼女は普段はミオのサポート役や調停役に回ることが多い。それは単純に1番最後に造られた人造魂魄だからだ。
それもあって、他の人造魂魄たちに遠慮して我を通すことが少ない彼女だが、その分、自分の活躍できる機会に餓えている。ハングリー精神旺盛な人造魂魄なのだ。
「リ・・・・リク?」
「・・ん?何?ヒカル」
ヒカルがリクに話しかけた。いつもと違って集中しているリクに若干戸惑ったヒカルだったが、リクが普段通り返答を返すと元に戻り、若干心配そうな顔をしながら聞いた。
「大丈夫なの?その体力は・・・」
「うーん、まあ、ライブ自体は全然平気。だけどその後に襲撃とかされたらちょっときついから対応よろしく」
「・・・・信頼されていると喜べばいいのか、嘆けばいいのかわからないわね」
「まあ、無いと思うけどね。午前の馬鹿どもの件で、普段よりこの周囲の警備きつくなっているし」
「そうなの?」
「まあね。でもヒカルはあてにしちゃだめだからね」
「わかっているわよ・・・って言っても、私もかなり体力キツイのよね。リクに言われたみたいに肝機能や心肺機能を増強する魔法かけているから回復速い分、他のクラスのみんなよりマシだけどね。まだうまく維持できないし」
「ま、いいんじゃない?変な気配あったら今日ぐらいは早めに伝えるよ」
「可能なら訓練とか言わず、常に異常を確認したら報告してほしいのだけれど・・・まあ、仕方ないか」
「護衛役が護衛対象の戦闘能力、というか警戒能力か・・・とにかく、それをあてにしてどうするんだよ」
「わかっているわ。やるわよ。でも愚痴ぐらい言わせてほしいわね」
「ハイハイ。なんにしても今日はよろしく」
「了解よ。あ、そろそろ時間みたいね」
「・・・そういえばすっごい今更なんだけどさ、普通ライブのことを心配しないか?」
「あら。心配されるほどの腕なの?」
「まさか」
「1年A組のリクさん。時間です」
「はい。了解です。んじゃまた」
「はいはい。頑張ってきなさいよ」
「おお」
リクは軽いノリでそう言うと舞台へと上がっていくのであった。




