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平々凡々に暮らしたい~異世界転生を300回繰り返した結果~  作者: 活字中毒者
ハジマリの霊視官
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依頼内容

短いので2話連続投稿です




「つまり、要約すると良いところのお嬢様が突然魔法を使えなくなった。そういうことですね?」


「おう!まあ、ぶっちゃけるとそういうことだな」


「少しは言葉を選ばないか、ミクル。しかし、彼の言う通りでもある。原因は未だ不明だがね」


 リクは情報を整理すると、医』を司る人造魂魄、ザクに念話で思い当たる病気をリストアップするように告げた。その後、『ザクの返答を確認するとシゲルに確認に入った。


「いくつか質問させていただいても?」


「かまわないが、受けてくれるのかね?」


「どうせ断れないように立ち回るつもりなのでしょう?」


 にやりとシゲルは笑いながらごまかした。リクからすれば自分が気に入られた要因がまるで分らなかったが、気に入られたものはしょうがない。そうなったらそうなったでできる限り大きな利益を得ようとするだけだ。リクはシゲルの反応を無視して話を進めた。


「霊体に損傷は?」


「無いそうだ」


「最近そのお嬢様が精神的なショックを受けたなどのことは?」


「それも無いらしい。もっとも自己申告ではあるし、年頃だから何か隠しているかもしれないがな」


「なるほど・・・師匠はなんと?」


「興味がないから任せる、だそうだよ。リク君。キミの方はどうあれ、彼はよほど君を信頼しているらしいな」


 ハア。リクはため息を隠そうともせず、シゲルの顔を見つめた。


「最後に、依頼内容を確認したいのですが、要するにお嬢様が魔法を使えなくなった原因を探ればいいのですよね?」


「ああ。なんなら解決してくれても構わないが?」


 シゲルはリクを試すように言った。


「買い被りです。自分はただの一、霊視能力者であって、そのようなことはできませんよ」


「そうかね?」


 リクのことが面白くて仕方がない。そう目で言っているシゲルの期待を鬱陶しい。そういわんばかりにリクは首を振った。


「それで報酬ですが・・・」


「ああ、それならいつも通り口座に振り込むぜ?」


 ミクルは先ほどから言葉を取り繕うことすらしなくなった。ニヤニヤと笑いながらリクを見つめるミクルを不快そうに見ながら、リクは報酬を断ることにした。


「お金は必要ありません」


「は?なんだ、ただ働きでもしてくれるのか?」


「リク君、当然だが報酬はしっかりと払わせてもらうつもりだが」


 少し慌てたようにシゲルがそう言ったが、リクはシゲルの目を見返して伝えた。


「いえ、そうではなく、金銭の報酬はいらない。そういう意味です。以降もお金で動くと思われるのは嫌なので」


「ふむ・・・なるほど、ではリク君。キミは何を求めるのかね」


 シゲルは少し考えこみながらリクに聞いた。


「今のところ、欲しいものは特にはありません。本当に欲しいものは自分の力で手に入れる主義ですし・・・とりあえず、シゲルさん。あなたに貸し1つ。これでいかがでしょう」


「それはまた・・・高くつきそうだね」


 シゲルは少しばかりうめき声を出した。


「そんなことありませんよ。単純に借りがある相手に対しては、次の願い事がしにくくなるでしょう?それを狙っているだけです」


「・・・なるほど、本当に高くついたな」


「いえ、払わなくていいのですから安いものだと思いますが?」


「そんな馬鹿な。キミほどの霊視能力者に要請がしにくくなる。それだけで私にとっては痛手だよ。なによりそれではキミを私の陣営に引き込んだとは言えないからね」


 本気で言っているシゲルに対してリクはこれ以上墓穴を掘らないように無難な回答を選んだ。


「過分な評価をいただきありがたいのですが、いささか評価が高すぎるように感じます」


「ふむ。キミは自分の『分』というものをわきまえた高位の魔法師、あるいは霊視官。その価値を知らないと見えるな。往々にして高位の魔法師であればあるほど自分の力を過信し、問題を起こすものだよ。


『分』をわきまえるには、失敗を繰り返すという経験が必要不可欠だが、高位の魔法師はその能力ゆえに失敗を起こす回数が凡人より少ない。プライドばかりが先行し最終的に年を取ってから失敗し、使い物にならなくなることもしばしばなのでな」


「・・・一般論でいえばそうかもしれませんが、私は『高位の』魔法師ではありませんし、『分』をわきまえているわけではなく、単純に面倒くさがり屋なだけですよ」


「そうかね?」


「ええ、そうなんです」


 リクのその態度にシゲルは面白そうにクツクツと笑いながら席を立った。


「では、今日はこれまでにしよう。いつ先方の家に行くかはむこうの都合もあるのでな。追って連絡しよう。予定が入っている日があれば今ミクルに言ってくれ」


「いえ。これといって用事はないので、今月なら高校の授業時間以外は大丈夫です。来月に入るとまた仕事があるので話は別ですが・・・」


「そうかね。ではおって詳細をミクルに連絡させよう。ああそれと、これは今までの話とあまり関係ないのだが・・・」


「なんでしょう?」


「ギターが趣味ならば報酬として有名なギタリストの紹介もできるが、どうかね?」


 シゲルは壁に立てかけられたギターを見て言った。


 その言葉に『芸』のリサが反応を示したが、リクはそれを無視した。


「・・・いえ、結構です。簡単に貸しを0にはしたくないので」


「ふむ、間があったということは完全な脈無しというわけではないらしい。そのあたりを報酬に考えてみるよ。ではな」


 そう言ってシゲルとミクルはリクのアパートを後にした。


「・・・疲れた」


 長く生きてきたとはいえ、決して人付き合いが得意とは言えないリクは今回の会合で大きく消耗したのであった。


 なお、その後『芸』のリサの機嫌が悪かったのは言うまでもない。





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