ミュージックフェス
今日は短め。
午前中馬鹿どもが来て店を荒らされたリクたちだったが、午後になってその影響で客足が衰えるかと思えば、そんなことは無かった。
普通に3時のおやつに食べに来るお客さんも多くいたし、大捕り物を行ったおかげで野次馬が増え、用事のないクラス全員が『リクの喫茶店』で働いていた。
「3番テーブルさんフルーツミックスクレープとリンゴのジュース」
「12番さんホットケーキチョコレートソース添えで」
「リク君うさぎさんの絵だって」
そしてなにより、リクが重たい空気を緩和するために行った、果物ソースやチョコソースでデコレーションされたスイーツが、その忙しさに拍車をかけていた。自分もやってほしいという客がとても増えたのである。
ただ、いきなりであったためリク以外にパッとデコレーションできる店員がいるはずもなく、対応に時間がかかるためお金を取ることにした・・・のだが、思えばそれが失敗だったのであろう。
祭りで浮ついた空気。一流シェフが訪れる店。そして可愛らしいデコレーションケーキをお金さえ払えば食べられるということもあり、客がさらに増えたのだ。
普通だったらお客が多すぎて回らなくなり、回転効率の低下とともに一部のお客たちがいなくなるはずなのだが、リクと助っ人で入ってくれた卒院生たち、そしてリクに鍛えられた1年A組の生徒は優秀だった。いや、優秀すぎた。
彼らが全力で頑張れば店が回った。いや、回ってしまったという方が正しい。結局、早い、美味い、可愛いくて珍しい、と3拍子どころか4拍子も揃ったリクたちの店は客足が衰えることもなく、学園祭としてはありえないほどの収益を上げていた。
そして・・・
「つ、疲れた」
「終わった?」
「なんで疑問形なんだよ・・・まあ、気持ちはわかるけどよ」
「リクが鍛えてくれてなかったら、リクが居なかったら絶対回らなかった。いやそもそもリクが居なかったらこんなに混まなかったわけだから、リクを責めるべきなのか?」
「どっちでもいい。もう喋る体力も惜しい」
「あたし・・・当分スイーツはいいわ」
「あたしも・・・かえっておせんべい食べたい」
「そうね・・・しょっぱいもの食べたいわね。お昼ご飯も誰も買いに行く時間なくてパンケーキだったし」
「同意・・・・あー、すっごいおなか減ったけど、他の店の残り物もらいに行く体力もないな」
「・・・・・・(無言)」
最後のお客さんが帰った瞬間、1年A組のブースには死体が散乱していた。
「リク君・・・なにかつくってくれないかな」
「さすがに無理だろ。スカイボール部の奴らとは別の意味で体力あるっつーか、耐久力あるっつっても、限度がある。ってリクは?」
「さあ?そういえばヒカルちゃんもいないな」
「リク君ならさっき生徒会長のアヤメ会長に呼び出されてなんか相談されていたよ?まだなんかやるんじゃない?」
「マジか!あの2人が!っていっても、あの2人兄弟姉妹みたいな感じだったからな」
「邪推すんなよ、今は対応するのも疲れるわ。ヒカルちゃんも一緒だってんだから、ありえないし、文化祭関係のなんかじゃね?」
全員が全員座り込み、だべっている中、勢いよくタケルが戻ってきた。
「おーい、みんな生きているかー?」
「死体扱いすんなし」
「生きているわよー、っていうか、タケル君体力ありすぎ」
「ん?そうか?まあスカイボールで鍛えているからな」
「「「「そういう問題じゃない」」」」
活力なく、それでも突っ込まざるを得なかったのかスカイボール部の部員たちが突っ込んだが、タケルは気にしなかった。
「まあまあ。お前ら元気出せよ!これから後夜祭だぜ?!」
「後夜祭かー」
「ああ、そういえばそんなスケジュールだったわね」
「私パス。でなくても別にいいんでしょ?そんな体力ないわよ」
気怠そうに答えていくクラスメイト達にタケルは言った。
「おいおい、そんなこと言っていいのかねぇ。われらが1年A組のリクがミュージックフェスの最終部門に残っているのに?これはみんなで見に行かざるを得ないだろう?」
「はっ?なにそのわかりやすいウソ」
「いや、本当だって」
「ありえないだろ。アイツ結局2日連続休憩なしでぶっ続けで俺らと一緒に働いていたんだぜ?」
「そうそう。そもそもエントリーしていないはずだし、していたとしても予選に出られていないわよ。タケル君つくならもっと嬉しいウソにしてよ」
「ウソじゃ・・」
「ウソではありませんよ?」
タケルの反論に思わぬ援軍が入った。アヤメである。
「アヤメ会長」
「ふむ、まずは皆さま。キサラギ祭を盛り上げていただきありがとうございます。そしてお疲れさまでした」
「あ、いえ。お疲れ様です」
「「「「「「「「「「お疲れさまでした」」」」」」」」」」
シズクに続いてクラスメイト達が斉唱した。完全にリクとの料理訓練で軍隊感覚が染みついている。
「それで1年A組のリク君の件なのですがね、リク君が騒ぎを鎮めるために魔法で音楽を流して果物ソースを生き物のように動かしたとか?私は馬鹿どもの起こした事件の後始末で現場を見ていないのですけど、そうですね?」
「え、ええ」
「それもあって、なのですが、その一件でミュージックフェスの投票の自由記入欄に複数1年A組の出し物の名前が書かれていまして・・・
私たちも、悩んだのですが、とりあえず本人に確認をしたところ1度は断られたのですけれど、投票数で2位になってしまったことを伝えて頭を下げると仕方なく了承してくれました。
今自宅の方にヒカルさんとアスカ先生と一緒に車で楽器を取りに行ってくれています」
「マジか・・・」
「うっわー、ご愁傷様」
「けど意外。絶対断る性格だと思ったのに」
「確かに・・・っていうか、魔法の発動この目で確認したけど、アイツなんであんなに魔法?音楽?まあどっちかわからんけど、とにかくあんなに上手いの?」
「さあ?もうなんでもいいよリクだし」
「ああ、確かに。リク君だしね」
「確かに、なんかそれで納得できるわ」
ハハハとつかれた笑いをしながらよっこいしょっとクラスメイト達は疲れで重い腰を上げた。
「ま、そんなら仕方ねぇ。われらが店長の晴れ姿だ。見に行きますか!」
「「「「「「「「「「おお!」」」」」」」」」」
そう言って1年A組の生徒たちは会場である魔法実習館に向かうのであった。




