孤児院の覇王
昨日は夜に一話投稿しています。
そちらを読んでいない方は、そちらからどうぞ
7月21日。キサラギ祭当日。リクたちのクラス。1年A組は興奮と期待。そして少しの不安に満ちていた。
「お客さん来るかなぁ」
「大丈夫よ。仕入れでもたくさん来てくれるって言っていたし」
「でもただでさえ、たくさん作る予定だったのに、それ以上に仕入れちゃったんだよ?余らないと良いけど」
「余ったら自分たちで食えばいいじゃん。どちらかって言うとうまくお客さんの対応できるかと、うまく料理ができるかの方が心配よ。私は」
「ま、まだほら、始まったばかりだし。うちのクラスのものを最初から食べに来る人はいないでしょ。こむのはお昼過ぎぐらいね」
「でも、ないみたいだよ。お客さんが団体さんでこちらに向かっているみたいだし」
最後の一言はリクの言葉である。その言葉に午前中担当のクラスメイト達の視線が集まったがリクは気にしていなかった。
「ほら。みんな配置について。来るよ」
「「「お、おう!」」」
「「う、うん」」
その言葉と同時に『リクの喫茶店』にいきなり8人の団体さんが現れた。義務教育前の子供たちと、優しそうな顔をした老年の男性だ。
「おはよう。ここが『リクの喫茶店』かな?リクはいるかな?」
「あーリクお兄ちゃんだ」
「リクにい。ここがリクにいの店なのか?」
「おはようございます。院長先生。それにみんなも。年少組だけ連れてきたんですね」
「おお。会えてよかったよリク。久しいな。少しでかくなったんじゃないか?」
「まあ。成長期ですから」
笑いながらもリクが対応する。来たのはリクが昔住んでいた孤児院の子供たちと院長先生だ。最初から団体さんということもあり、クラスメイト達は初めは若干慌てたようであるが、リクの冷静な指示もあり、きちんとオーダーに応えていく。
「ふむ。うまいな。さすがはリクのお店・・・というのも作ってくれた彼らに失礼か。それにしても手際が良いな。彼らは料理人志望か何かなのか?」
「いえ?そういうことは無かったと思いますが・・」
「いえ。違いますよ」
「そうです。ただの学生です」
リクの確認に対し口々にクラスメイト達が、肯定していく。
「そうなのかね?にしては手際が・・・」
「それは、まあ。リクに叩き込まれましたから」
1人が代表して答えると、背後でうんうんと残りのクラスメイト達が頷いた。院長先生はあっけにとられた後、リクの顔を見て笑い出した。
「ハッハッハ。そうかね?なんとリク。お前学校で素を出すようになったのか」
「それは、まあ。成り行きで」
リクが苦い顔をして答えた。
「クックック。そうかね?いやーよかった。実は霊視官に突然昇格することが決まったと聞いて、実は心配していたのだがね。お前は昔から学校では猫をかぶっているようだったから、がんじがらめになっているのではないかとね」
「そうだったのですか?」
「おや、キミは。たしか・・・」
「あ、すみません。初めまして。リクの護衛官兼クラスメイトのヒカルです」
「ああ、なるほど・・・キミが。ふむ。しっかりした子のようだ。ああ、自己紹介がまだだったね。リクの昔居た孤児院で院長をしているシンジという。それで、リクの昔の話だったか」
「ちょっと院長先生。ここで話すことでもないでしょう?」
リクは本当に嫌そうにシンジを止めた。しかしリクを子供のころから知っているシンジにとって、リクはいつまでたっても子供ということなのか。シンジはリクの願いを聞き入れなかった。
「別にいいだろう。リク。年寄りの昔話は聞くものだ。それで、リクの話だがね。リクは孤児院では伝説の『孤児院の覇王』として有名なのだよ」
「はおー」
「はおーってなに?」
「ばか。おうさまのことだよ。りくにいはむかしとってもすごかったんだって。いんちょうせんせーがまえにはなしてくれたんだ」
シンジの連れてきた子供たちが口々にそれに反応する。
「プっ。い、いえ失礼。は、覇王ですか?」
引き攣った笑みを浮かべるリクをよそに、ヒカル、及び周囲のクラスメイト達は笑いをこらえながら話を聞いていた。
「うむ。孤児院に入ってから3日で孤児院の厨房を掌握し、食料に関する全権を握ったリクは、それを盾に当時いたガキ大将に宣戦布告をしたのだよ。
・・・あれは傑作だった。普段はガキ大将の側につく側近どもを料理で篭絡し、最終的には5歳も年上のガキ大将を魔法でぶちのめしたのさ。そっから先、リクに逆らえるやつはいなくなってね。
いきなり「働かざるもの食うべからず!お前たち!孤児だからって甘えているんじゃねえぞ!」とか宣言すると、料理を孤児院の全員に仕込み始めてね。
ああ、裁縫もやっていたか。挙句の果ては「こんなまずい食材で作った飯を食っているから性根が腐るんだ!孤児院の財政が悪いなら俺らで立て直す!」とかいってね。
みんなで農家に行って手伝いする代わりに形は二級品だが味はいい野菜をもらったりしてね。おかげでうちの孤児院は評判が孤児院と思えないほどいいんだよ。
最初は孤児に対する虐待じゃぁないかとか言われたもんだが、最近ではうちの孤児院に取材がきたりしてね。どうすれば孤児院をうまく運営できるかとか聞きに来るんだけど、わたしゃ見ていただけで、なにもしてないもんだから、仕方なくリクのことを名前は伏せて話したのさ。
そっからさね。リクに、というか謎の孤児に『孤児院の覇王』とかいう2つ名が付いたのは」
「プっ、いい。いえ、すごい話ですね」
「覇王だって、リク君が『孤児院の覇王』」
「くっくっく」
ヒカルが噴出したのを皮切りに一斉にクラスメイト達は笑い始めた。当然リクも不満をあらわにするが、効果は薄かった。
「お前らなぁ!」
「アッハッハ。ダメだ!リク今お前の顔見たら!アッハッハッハ」
「うるせえぞ、お前ら!院長先生もやめてください」
「なに、別にいいではないか。学校では一変、猫の皮をかぶっていたみたいだからストレスがためっているのではないかと思っていてな。
今日は会えてよかった。よかったな、いい友達を持ったみたいで。そういえば、他の卒院生も同じ職場の同僚と一緒に来るとか言っていたな。久しぶりに旧交を温めると良い」
「そうですか。わかりました」
その後、シンジたち一行はひとしきり料理を食べた後、もう少しキサラギ祭を見て回ると言って帰っていった。その後もリクたちのクラスに客が途絶えることは無かった。
朝が早い農家の方々や、警備を強化しているついでに見に来た警察のカンジやナギサ。リクの仕事先の研究所の方々などなど、リクたちの店は大繁盛で、人数が足りず、シフトが急遽変更されるほどであった。
そしてなにより・・・
「あ、お久しぶりです。シュウジさん」
「おっ、やってるねぇ。リク君。今日はキミの店に敵情視察に来たよ」
「俺の店とは言っても、学祭の出し物ですよ?」
「それでもかなり評判じゃないか。たいしたものだよ」
リクの孤児院でリクに仕込まれた卒院生たち。彼らがリクの霊視官補佐時代のつてもあって就職できた、就職先の一流のプロの料理人たちとともにやってくるのだ。
中には地球でいうところの3つ星シェフ並みの知り合いもリクにはいて、それも真剣に料理を味わい、料理人たちの動きをじっと見ているものだから、クラスメイト達は気が休まる時がなかった。
そして、一流の料理人たちが訪れるほどおいしいと評判になったリクの店は、さらに客を呼び、パンク寸前で店をまわしているのであった。
うう・・・お腹の調子が・・・
しかも寝不足が・・・
体調管理は重要ですねWW
皆様も33都道府県でインフルが増加中らしいのでお気をつけて
私はインフルではありませんが、生活環用の変化についていけていない感じです(汗
それではまた明日




