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平々凡々に暮らしたい~異世界転生を300回繰り返した結果~  作者: 活字中毒者
ハジマリの霊視官
45/81

キサラギ祭準備

投稿が遅れてしまいすみません。

ストックはあるのですが、時間がなくて・・・

ゴールデンウィーク中に書き溜めないとですね。

少し長めです。







 基本的に高校最初の一年ともなれば、あまり面白くないイベントや企画が多かったり、勝手がわからず進行が遅かったりするクラスもあるのだが、1年A組はそんなことは無く、順調に作業が進んでいた。そこにサボる者はいなかった。というか、怖くてサボれるものが出なかった。


「ス・・・」


 もはや無言で、1人の生徒がリクの前にレシピ通り製作中のお菓子の生地を差し出した。


 リクはそれを軽く見てこたえた。


「まだ混ぜ足りない。この辺が玉になっています。やり直させて。生地から水分が飛びすぎないよう温度には気を付けて」


「そこ、もう少し細かく切って。食べた時の食感を左右する重要な果物だから」


「ひっくり返すの。もう少し早く。下手に生地をいじりすぎない」


「集中が切れています。10分休憩してきて」


 リクは途切れることなく指示を出し続ける。当然最初はやる気のない男子から不満の声も出ていたが、


「じゃあ、別の企画にしようか」


 とリクが言った瞬間、リクの料理のとりこになった女子たち数名に彼らは無言で連行されていった。そして帰ってくると不思議なことに素直になっていた。リクにとってはとってもありがたいことであるし、やる気があってなによりである。


 そして今、リクたちは不思議なほどひとまとまりになっていた。理由はいくつかある。


 1つ目。リクの料理の大ファンになったものがほとんど、というか全員であること。リクは文句があるなら食わなくていいし、やらなくていいといったのだが、その言葉で逆に気合が入ったのか、本気で取り組んでいるものが多い。手伝わないとリクの料理が食えないというのも大きいのであろう。


 2つ目。リクの指導が明らかにうまいこと。リクは自分の料理の技術を余すことなく伝えているし、詳しく知りたければ詳細に何故そうしなくてはならないのかちゃんと教えてくれるのだ。


 これは、この世界においては、というか地球の料理店においても普通ならあり得ないことである。リクの指導にとても価値があることをしっかり理解している生徒が多いので、自然とまじめな雰囲気ができているのだ。


 今ではクラス外の調理部の面々が作業に勝手に参加しているし、料理の後に自主的に反省会が開かれているほどである。


 3つ目。出来上がっているもののクオリティが明らかに上がってきていること。リクの料理のファンが多いとは言っても、成果が出ないと人間頑張れないものだ。これはリクの指導がうまいことと密接に関係していた。


 4つ目。リクは休憩のとらせ方がうまい。リクは、霊視で疲れてきている生徒にすぐに気が付き、休むよう指示を出しているのだが、そのタイミングが最高なのだ。そのためクラスメイト達は常に高い集中力を維持していた。一方でリク自身がほとんど休憩を取らないので、文句が言いづらいというのもある。


 最初こそ、もっと休ませろという声(この声は作業が進むにつれて、みんな集中し始めたのか、無くなった)や、やる気のある生徒からはもっと頑張れるという声もあったが、リクの言う通りにした方が、効率がいいということに気が付くと、そのようなこともなくなった。


 一切休まずに作業を続けているリクに対して文句を言えないというのもある。今では、バカみたいな量の作業をこなしているリクを、化け物のように見ている生徒がほとんどである。


 リクのおかげというばかりではなく、ノリが良い生徒が多かったこともあるのだろう。1年A組の企画『リクの喫茶店』はキサラギ祭前から有名になっていくのであった。












 バタバタと校内全体に慌しい空気が流れていた。


「早く椅子もってきて!」


「飾り付け用の材料が足りない?マジかよ!」


「あ、おついでに買ってくるわ」


「そろそろ当日使用する魔道具と電子機器に電源入れてくださーい。当日どの程度電力と魔力使うか把握したいので」


「マジで?もうそんな時間かよ!」


「考えるな!考える前に手を動かせ」


「障壁用の結界!展開準備急いで!」


「やっべ。塗るとこミスった。っていうか周囲に塗料跳ねた」


「ちょ、おま。ふざけんなよ。汚れてんの俺じゃねえか!」


「まあまあ。どうせジャージじゃん。ほら早くいいから手を動かせ」


「・・・お前。後でアイス驕れよ」


「わーったよ」


「はいはい」


 いかに魔法のある世界といえども、文化祭の前の校内の慌しさは世界共通らしい。かく言うリクのいるクラス、1年A組もそれは同じ。いや、それ以上だった。予想外のことが起こりすぎたのだ。


 料理の技術の方はまあいい。クラス全員ある程度の腕まで言ったし、作るのは簡単なパンケーキ、クレープ、それに作り置きのクッキーなどの菓子類だ。ソースや生地の方はリクが作ったレシピ通りであるし、練習もたくさんしたのだ。大丈夫であろう。


 問題は調理以外の点である。


 問題その1。仕入れ。仕入れがうまくいかなかった・・・わけではない。逆だ。リクは自分が思っているより農家の方々に好かれていたらしく、頼んだ量よりかなり多い量の食材をおまけしてくれたのだ。


と、いうのもリクは孤児院時代、小遣い稼ぎに農作物の生育状況を霊視で確認したり、収穫作業を手伝ったりしていたことがあるのだ。その当時の知り合いが、リクのクラスの企画を聞きつけ多くの作物を卸してくれたのだ。


 仕入れ係も最初は喜んでいた。単純におまけの分安くなっているようなものだし、農家の方々も絶対店に行くと言ってくれたのだ。それに今年は豊作の作物がいくつかあったというのも大きいだろう。最初は嬉しかったのだ。最初は・・・しかし気が付けば仕入れた量は既に予定の1.5倍。このままだとリクのクラスだけでかなりの冷蔵庫を使用してしまう。というか、割り当て分以上の冷蔵庫は使えない。


 リクたちは急遽、他の食事を出すクラスや部活に頭を下げ、使える食材を譲ることになった。他の生徒たちも仕入れが安くなるならと、最初は喜んでいた。が、リクのクラスに来て絶句した。つまりそれほどの量の食材があったのだ。


 問題点その2。1にも関わることだが、仕入れた食材の下ごしらえの量がハンパなく増え、大量の人員と時間が動員され、他のスケジュールを大いに圧迫した。具体的には衣装の作成、クラスの飾りつけ、などである。


 リクたちのクラスだけでなく、もはや学校全体のスケジュールを圧迫した大量の仕入れ事件により、食事を提供するどのクラス、および部活も、衣装の作成時間が減少した。


この世界でも地球と同じように、手芸ができる女子生徒の中には、料理がうまい女子生徒が多かった。その生徒たちが一斉に食材の下ごしらえに回されたのだ。当然、裁縫にかかる時間は減少し、どのクラスでも衣装の製作が遅れていた。


 問題点その3。馬鹿な他クラスの奴ら2名がリクとヒカル(というか、1年A組全体)に喧嘩を打った。これは文字通りの意味であり、ただでさえ忙しい中で、リクたちに難癖をつけた挙句、下ごしらえをしている食材の一部に向けて魔法を放ったのだ。


 当然、というかどう述べるべきか、クラス全体がキレた。ただでさえクソ忙しいのに仕事を馬鹿どもに増やされたのだ。馬鹿がどうなったかはさておき、リクとヒカルが代表として職員室に呼び出され、さらに時間を圧迫した。


幸い、通りがかった生徒会長のアヤメが一部始終を見ていたこともあり、厳重注意の上、無罪放免となったが、これにより貴重な戦力を欠いた1年A組の作業はさらに遅れたのだ。


 そして今。


「そこ、皮むき粗い。忙しくても丁寧に」


「はい!」


 リクはそう言いながらも超特急で、具体的には他の生徒の3倍の速さで果物の皮をむきながら、自身も魔法を駆使し、一騎当千の働きをしていた。料理にかかり切りかと思えば、その場を任せて裁縫の手伝いにかかる。


シュパパパともはや手が見えないほどの速さでこれまた作業を終わらす。『食』のミサ、『芸』のリサ。そして『知』のミオ。加えて『戦』のケン、『医』のザクまで動員して、自分にできる最高速度で仕事を終わらしていく。


「慌てるな。まだその時間じゃない。大丈夫、このままいけば絶対間に合う」


 その上で周囲の士気を保つことも忘れない。リクはさながら軍の隊長のようであった。


「「「「おお!」」」」


「「「「はい!」」」」


(我が主よ。壁の飾りつけが遅れているのである)


(っち、めんどくせえ。おい、あそこのやつ疲労しすぎだ。休ませろ)


「壁の手伝い。ヘルプに入ります。ハクさん、飛ばしすぎ。5分休んできて」


「は、はい」


 そして、壁の飾りつけをしながらも・・・


「タケル!玉!」


 生地の練りこみが甘く玉ができていることをタケルに伝える。


「おうよ!もっと生地練るぜ」


((((((((どこに目ついているんだよ!今見えてないだろ!!!!))))))))


 霊視により、調理の方の指示出しも忘れない。クラスメイト達はリクにツッコミながらも、タケルやヒカルの言う通り、リクが普通じゃないことを認識し始め、そして段々と染まっていくのであった。


 そしてキサラギ祭前日夜8時。


「「「「「「「終わったー!!!」」」」」」」


「マジかよ!絶対終わらないと思ったのに」


「いや、俺らすごくね?」


「いや、すごいのはリク君でしょ」


「あー、アイツはまあ、あれだ。別格だ。気にしてはいけない」


「うむ。そのことが今回の件でよくわかった」


 うむうむと、リクのクラスの男子生徒は本気で頷いていた。


「確かに・・っていうか当人のリクは?」


「さあ?なんかちょっと食材の方みてくるって言っていたけど?」


「まだ働いているのかよ・・・」


「いや、さすがに働きすぎじゃね?自分は休憩一回もとってないじゃん。どういう体しているんだよ」


 さすがに心配そうに男子生徒の1人が言った。


「あー、なんか疲れた時は負担の少ない仕事を効率よく入れると良いらしいわよ?」


「社畜じゃん!っていうか、なんかいい匂いしねぇ?」


「確かに・・・」


「あー、確かに。気が付けばすっげえ腹減った」


 グーっと腹の音が鳴り響く中、至福の声がクラスに響いた。


「みんなー。差し入れ持ってきたわよ。リク君が時間余ったからって余っていた食材でみんなに豚汁作ってくれたわよ」


「「「「「「「「「マジか!!」」」」」」」」」


「あ、リクじゃん」


「ちょうどいい。運ぶの手伝って。おにぎりも作ったんだけど、重くて・・・」


「「「「「「「「「おお!」」」」」」」」


「リク!お前、実は神だったのか!」


「美味い!」


「ありがとな、リク」


「って、先食っていいのかよ」


「別にいいだろー、腹減っているんだよ!」


「俺もだよ!つうかみんなそうだろ!早く俺にも寄こせ!」


「リク君って、本当になんでもできるわよね」


「本当にね。まさか裁縫もできるとは」


「っていうか、明らかに女子力がクラスで一番・・・あれ?なんだか悲しく・・・」


「それ以上は考えない方がいいわよ」


「そうそう。リク君は男子じゃなくてリクっていう性別?種族?なのよ」


「確かに、性別リク!みたいな?」


「なにそれ」


「けど、言いたいことはなんかわかるわ。ありゃ確かにどっかおかしいって」


「お前らな・・」


 さすがにリクも文句を言ったが、クラスメイト達は笑うだけだった。それはキサラギ祭の準備を通じてリクが、そしてヒカルも、1年A組のクラスメイトとして認められた証だった。


「はあ・・・さすがに疲れた」


「お疲れ、リク。はい豚汁。持ってきたわよ」


「ホレ、おにぎり」


「うわー。いつもすまし顔しているリクが、疲れた顔しているの初めて見たかも。これはスクープだね」


 地べたにペタリと座り込んだリクに、タケルとヒカル、そしてなぜかミクが集まってきた。


「お疲れ。っていうかミクはなんでうちのクラスいるんだよ」


「まあいいじゃん?私も結構1年A組の手伝いしたし?役に立ってったっしょ?」


「まあ、そうだけどよ。ちゃっかり豚汁飲んでいるし」


「まあまあ」


 わいわいがやがやと騒ぎながらも、帰る時間が近づいてきた。


「じゃあ解散するわよ!明日みんな遅れずに来てね。寝坊しないように。じゃあ最後にリク!なんかある?」


「へ?えーっと、なぜ俺に?・・・まあ、あれだ。調子に乗って無茶苦茶言ったけど、クラスのみんながなんだかんだ言いながらも付いてきてくれて、じっさい結構嬉しかったです。明日はみんなで精いっぱい楽しみましょう。お疲れ様でさまでした!」


「「「「「「「「「お疲れさまでした!!!」」」」」」」」」


 そうしてリクたちのキサラギ祭の準備は終わった。明日、リクたちの7月21日は待ちに待った文化祭である。


 当然、リクたちの文化祭が平穏に終わるわけもなく、様々な事件が起こるのだが、それはまた別の話である。





最近リアルが忙しく、モチベーションの維持が難しいです。

働きながら執筆している方々は凄いですねww

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