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平々凡々に暮らしたい~異世界転生を300回繰り返した結果~  作者: 活字中毒者
ハジマリの霊視官
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霊視官のお仕事

今回は少し短いです。

前回の話でリクが誰に呼び出されたのかについての補足が入っています。

今日の話を読めば、読み返す必要は特にありませんが、気になる方は読み返してみてください。




 現場に急行すると知り合いの刑事がすぐにあいさつに来た。すでに現場は落ち着いており、鑑識たちがせわしなく動いているのも含めていつも通りだった。


 魔法犯罪としては単純なものなのであろう。詳しくはリクもまだ知らないが、怪我人の類もなさそうで、単純な魔法による器物破損であるとリクは考えた。


 もっとも、故意かどうかによって対応が変わるのは間違いないが、その辺はリクには関係ない。


「こんばんは。こんなに遅い時間なのにあなたが来たのですか?」


「おたくらのボスが呼び出したんでしょうが・・・」


 最初に会った、もはや知り合いとなっている刑事にそう言い、げんなりとした様子を隠そうともせず、すぐさまリクは霊視にむかう。


 残留思念波は時間経過で減少するため、早く霊視しなくてはならないのだ。


 もっとも、さすがに高位の霊視官とは言えど、通常時は霊視した結果がそのまま監察結果になることはありえない。霊視官の仕事は『思念波記録フィルタ』で記録すべき情報の位置を警察に知らせることである。


 思念波の波形特性により、思念波記録フィルタで記録した場所で魔法を使用した個人を特定できるのだ。


 その『思念波記録フィルタ』の値段が高く、量産が難しいため、最初に霊視官による捜査であたりをつけるのだ。


 昔は『思念波記録フィルタ』が存在しなかったため、霊視官の観察結果がそのまま証拠として認められていた。


 しかし、客観性がないこと、霊視官の買収、および逆恨みによる霊視官への攻撃の激化など、様々な問題があり今の体制に落ち着いたのである。

 

 一方で『思念波記録フィルタ』の製造そのものにも霊視官が必要なので高位の霊視官の少なさも相まって、霊視官の忙しさは昔とほぼ変わらない。(ところによっては激化している)


「おう!終わったか?」


「アンタか・・」


 後ろから声をかけられたので振り返ると、そこには30台のいかにもおっさん臭いおっさんがいた。名前はカンジ。リクに仕事を文字通り山のように振り分けてくる、ふざけたおっさんである。


「いやー、さすがにお前は霊視が早えな!初動が早くなって大助かりだぜ」


「ふざけんな。こちとらまだ年齢的に犯罪捜査にかかわらなくていいはずなんだが?研究補佐だけやってりゃいいはずなのに、なぜ犯罪の捜査に、それもこんな夜中に、それもわざわざ緊急コールで、呼び出されるのかご説明いただけませんかね?」


「いやー、アッハッハ」


「笑ってごまかすな!」


「仕事をしてください。部長」


 リクとカンジの会話に割って入ったのは、いかにも有能なキャリアといった感じの、眼鏡(霊視増幅機能付き)をかけたスタイルのいい美人な女性であった。


「げっ!ナギサか!なぜ?休暇のはずじゃ・・・」


「事件が近くであったら駆けつけるのは刑事として当然です。あ、休日出勤届は出しますのでご了承ください」


「まじか・・・」


 地球よりも明らかに労働基準法が厳しい(子供のころから働く、という点ではブラックに思えるが、それ以外の点では明らかに地球のものより厳しい。むろん、罰則も、である)この世界で、部下を休日出勤させるというのは評価を大きく下げる。いつの世も中間管理職は大変なのだ。


 視線の力だけでカンジを仕事に向かわせたナギサはリクの方へと向き直った。


「こんばんは。リク君。こんな夜中に協力してくれてありがとうね」


「いえ、ナギサさんに会えただけで嬉しいですよ」


「まあ、口がうまいわね」


「いえ、本心ですから。もっとも『協力』ではありませんが・・・」


「?・・『協力要請』に応じてきてくれたんでしょ?」


「いえ、『緊急要請』でした」


 霊視官は『協力要請』は断れるが『緊急要請』は断れない。本来なら大事件でもない限り『緊急要請』などしてはいけないことになっている、ハズなのだ。

  

 リクが狙い撃ちされるかのように『緊急要請』で呼び出されるのはこれで5度目だが・・・


 ピシり、と空気が張り詰めた。実際高位の霊視能力者であるリクは、ナギサの発する思念波の波長が、いわゆる『怒』と呼ばれる状態に変化したのを感じた。リクはそれを読んで先に『身体強化』していたので大丈夫だったが、周囲の警察官や刑事たちはそうもいかなかったようである。


 もっとも、リクはナギサを味方につけるためにナギサを褒めて味方につけてから、事実を言ったのである。言ってしまえば確信犯である。


「そう・・・私は部長とチョーっとお話してくるから、今日はもう帰っていいわよ、リク君。お疲れ様」


「いえ、ナギサさんこそ休日の夜中にお疲れ様です。それでは帰りますね」


「ええ・・」


 ナギサの顔は最後まで微笑んでいたが、思念波は最後まで『怒』のままだった。リクが帰った後、ナギサの怒声とカンジの悲鳴が聞こえたのは言うまでもない。


 これで少しは現状が改善するだろうとリクは溜飲を下げるのであった。






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