シゲルとの対話
本日二話目
キリが良い、というよりは次の話が長いのでラストです
「すまなかった。ミクルには単純にキミが霊視官補佐から昇格したことだけを伝えるようにと伝えたつもりだったのだが」
開口初めからシゲルはしっかりと頭をリクに対して下げた。もっとも隣のミクルの頭を押さえつけながら・・・ではあるが。
「ああ、その件はなかったことにしてください」
「いや、しかし・・警察上層部の判断でね。組合・・・というかレイジさんの許可も得ている。私もキミを霊視官にするのには賛同している。もっと君にこれから活躍してもらいたいのだ」
「ですから、無かったことにしていただきたい。そもそも組合(世界霊視能力者管理組合)から私は何も聞いていませんが?」
「組合についてはミクルから通達が言っているはずだが・・・まだリク君に通知がいっていないだけだろう。(隣でミクルが慌ててコクコクと頷いた)
一応霊視官になりたくない理由を聞いてもいいかね?成年になれば嫌でもキミは霊視官にならなくてはならない。それが早まるだけであるし、今まで以上に給料もよくなるはずだ」
「・・・私は、一高校生である今、そこまで働く気はありません。霊視官となれば今まで声がかかっていなかったところから大量に仕事の依頼が来るでしょう。特例で霊視官になるほど優秀な霊視官となればなおさらです。しかも住宅手当も切れる。そうですよね」
「・・・では、こちらの方で仕事がこれ以上増えないように調整しよう。追加して住宅手当も約束する。確かに、我々の中にはキミにもっと働いてほしいという意思があったのは確かだが・・・こうなってしまっては致し方ない。キミがこの国からいなくなる方が、損失がでかいからな」
「周囲に騒がれるのも嫌なのですが・・」
「その辺はこれから交渉しよう。こちらは賠償金を払う用意があるし、なんなら思念波遮断フィルタ(霊視能力を下げるフィルタ。高位の霊視能力者が、自身の霊視能力によって、周囲の人の感情に当てられないようにするもの)を組合に言って支給させる。
もっとも、これは全ての霊視官、および霊視官補佐に言えることではあるがね」
「護衛に四六時中付きまとわられるのも嫌なのですが・・・」
「その件だが・・・怪我の功名とでもいうべきか、おそらく、キミの今回の一件を上層部に報告すれば、護衛の人数や時間は減らせるだろう。
ミクルの暴走とはいえ(ミクルがぶんぶんと首を振った。おそらく師匠のレイジの暴走だと言いたいのであろうが、シゲルはそれを察したうえで無視した)8人もの手練れの襲撃者を撃退したわけだからな。護衛はそれほど要るまい」
「ハア・・・それもそれで周囲に絡まれそうですが・・で?ヒカルさんが護衛の予定なんですよね?」
「ああ、表向きはね。ごつい護衛が良いというのであれば別に用意するが・・・」
「いえ、結構です。代わりに結界の魔道具をお願いしたいのですが」
「かまわない」
シゲルはジッとリクのことを見つめた。なにがなんでもリクのことは離さない。そんな目をシゲルはしていた。
「・・・・ハア。今回の一件、とりあえず後でお金の話はするとして、一応これ以上はいいです」
「そうかい。よかっ・・」
「ですが、これはシゲルさん個人への貸しとしておきます。あくまで霊視官になる際の条件のすり合わせと、襲撃の件の保証がこれで終わった。それでいいですか?」
リクはシゲルがホッとしそうになったところで不意打ちをかけた。
リクの言った最後の条件は、実のところ最後通告でもある。シゲルがこの条件を飲まないのであれば、リクは今までの話を全てなかったことにするつもりだった。
だから簡単に霊視官になることを認めたのだ。そのことをシゲルもちゃんと理解したのであろう、シゲルはリクの目をしっかりと見て頷いた。
ヒカルはようやくこの気まずい場違いな場所から解放されると知ってホッとしていた。ミクルはそれとは反対に死んだ魚のような目をしていたが、その場にいる誰もがそれを無視していた。
帰り際、シゲルが不意に言った。もしかしたら先ほどの不意打ちの仕返しかもしれない。
「キミは、多才だな・・・・交渉事にも向いているようだし。その気があるなら私が後見人になるが、どうかね?」
「やめてくださいよ、本当に」
本当に嫌そうにしたリクに対して、シゲルはハハハと軽く笑いながらリクの家を去るのであった。




