襲撃者
本日一話目
(ふう・・やっぱり研究所の仕事はいいね。学ぶことも多いし、本当にためになる)
(将来はあそこに就職なさるので?)
(今のところ第一候補だね。植物相手だからそこまで殺伐としてないし、なにより『上手くいかなかった植物の組み合わせ』っていう本来の結果から外れた研究成果も有用と認めて論文にまで出している所長は、実際、なかなかの人物だよ)
(他の有力者と比べて表裏がないのもポイントですね)
(確かにね)
リクはミオと話しながら久しぶりに上機嫌で自分のアパートの前まで来て・・・すぐさま機嫌が悪くなった。もちろん、周囲で監視している馬鹿どもに悟られるようなへまはしない。
(ミオ)
(周囲に敵8。監視、いえ、包囲されています。警戒ランクを2段階上昇します)
(周囲に一般人と予想される人影は?)
(ありません。おそらくなんらかの『人払いの結界』を利用しています)
リクは表向きなににも気が付いていない様子を装いながら、自分のアパートへと足を進める。アパートの前にもう2人気配を感じたが、リクはその気配を感じた途端、頭が痛くなった。
(アイツか・・・にしも、なんでアイツが彼女と一緒にいるんだ?)
「よ!リク」
「ミ・・」
ミクルか。そう言おうとしたリクが言葉を噤んだのは、厄介ごとの気配を感じて無視した方が賢明だと考えたから・・・・ではない。包囲している監視者たちの1人がいきなり攻撃してきたからである。
魔法の発動を伴わないがゆえに、高位の霊視能力者に対して有効な、投げナイフによる攻撃がが一斉に6方向からリクに向けて放たれる。
リクはそれをかわし、それだけではなく飛んできたナイフを1つつかみ、ナイフが放たれるとほぼ同時にリクに対して突っ込んできた2人に対して投げ返す。
突っ込んできた2人は、襲撃に気が付かれ躱されるだけではなく、反撃までしてくるとは思っていなかったのか一瞬反応が遅れ、躱すのではなく風の障壁魔法でそれを防ぐ。いや、防ごうとした。
しかし、リクの風魔法によって途中で軌道を変えたナイフはナイフを投擲した後衛の1人の太ももに突き刺さった。
「ッ!」
まさか味方が負傷するとは思っていなかったのか一瞬判断が遅れた襲撃者たちだったが、すぐさま殺気を放ち反撃に移った。
(襲撃しておいて今、殺気を放つとか、すごい今更だな)
(おそらく敵の狙いは命ではなく、捕縛でしょう)
(いや、おそらくそれも違うな)
(では?)
(うむ、いまだに参戦しないミクル殿の性格を考えても、おそらくこれはなにかの情報収集の類であるな。もっとも楽観はできんが・・・主よ、あまり手札を見せない方が良いな)
(わかっている)
一瞬でケン、ミオの両者と打ち合わせを終えたリクは、すぐに残りの襲撃者の無力化に移った。
前衛の2人に突っ込むと見せかけて、『アクセラレーター』。反転。回り込んでいた後衛の襲撃者の1人に対し、『エアバレット』を散弾のように打ち出す。
(2人目)
そのまま、蹴りを加え倒した2人目を、ヘッドロックし他の襲撃者への盾とする。一瞬判断が遅れた残る6人に対して『エアバレット』の散弾。
それに対して襲撃者たちは風の障壁魔法を展開。すべてを防ぎ切った、かに思われた。
見えにくい『エアバレット』の特性を生かし、リクは弾丸のいくつかを障壁の前で止めていた。前衛の敵が障壁を解除し、攻撃に移ろうとした、瞬間。彼らの耳元で大音響が鳴り響いた。
風魔法『音響爆弾』。意外にも魔法の3大要素である『放出』ではなく、高ランクの『霊視』が必要とされる精度の高い魔法だ。
霊視能力が霊視官レベルでないと使えない魔法の1つだが、それゆえにあまり知られておらず対策も少なく、効力の高い魔法でもある。
もっとも、高い霊視能力を持つリクからすると当たり前に使える魔法の1つでしかない。
(4人目)
もろに大音響の音をくらった前衛二人は沈黙。後衛4人も一部ダメージを受けている。
リクはそのスキを逃さず、盾にしていた襲撃者から奪った投擲用のナイフを2本連続して投げる。
(あと2人。これで・・)
終わり・・・そう思っていたリクではあったがとっさにその場を飛びのいた。ミクルと一緒にいた少女が助走もせずに飛び蹴りを放ってきたからだ。その合間に残りの襲撃者たちは体勢を整えた。
「リクさ・・」
「なんのつもりだ?ヒカル。ミクルも返答次第によってはお前ごと殴り飛ばすけど?」
たとえかつてのクライアントとはいえ、襲撃者の援護に入った以上リクは気を許すつもりはなかった。リクは慌てて話しかけてきたヒカルを無視し、全てを知っていて未だに動いていないであろうミクルに話しかけた。
「いや~、やっぱすげえなお前。ジジイがその若さで認めるだけのことはある」
返答になっていない言葉にリクは闘気を飛ばすが、ミクルは気にせずひらひらと目の前で手を振った。
「まあ、詳しい話はお前の家でしようや。安心しろ、これ以上はさせねえから」
リクはジッとミクルのことを睨みながらも、とりあえず持っていた投げナイフ(襲撃者から奪った残り)を道路に投げ捨てた。しかし、戦闘態勢を解く気はなかった。
その態度にミクルは珍しく気まずそうに顔をしかめた。
「あ~、悪かったって。ちゃんと全部説明するから。とりあえずこれ以上結界維持させるのも限界なんだ。ちゃんと損害の補填はすっから家で話そうぜ?お前も近所の人にこの惨状を見られたくはないだろう?」
「当然だ。後でお前個人から金はむしり取る」
「えっ?うそ、まじで?それはちょっと・・」
「むしり取る」
「ア、ハイ。(アカン予想以上にキレとる)」
リクはそう言うと自身の家に足を進めるのであった。
昨日の2話目の後書きにある私からの質問の件ですが、同じ日の予約投稿なので結果は数日後の後書きで・・これで回答者0だと悲しすぎるのでよろしければ是非!




