ストレス過多な日常
本日二話目
その日。というかここの所、リクは不機嫌だった。その原因は明らかで、単純にリクの(あまり大ごとにならないでほしいという希望的な)予想をはるかに超えて、スカイボール部の一件の影響が大きかったことである。
平々凡々。大人たちからの評価は中の上から上の下。同年代からの評価はそれより2・3コほど下ぐらい。それぐらいの評価で目立たずにひっそりと高校生活を送りたい。
そんなリクの願いは高校に入学してから2ヶ月半という、あまりにも早い時期に打ち砕かれた。
そして今も、リクをさらに不機嫌にさせる案件がリクの目の前に存在していた。
「ごめんなさい」
「なっ、なんでですか!」
(ガキの頃の色恋沙汰は、一番嫌いなんだけどな。外野から野次馬しているならともかく)
現実逃避に、そんな適当な(そして告白してきた女子にはひどい)ことを考えつつ、リクはさっさとその場を離れることにした。
元々、リクは人づきあいが苦手なのだ。そのため、こんなふうに目立つ告白をしてくる時点であまり好きになれないのである。なにより、霊視からも、目の前の同級生が恋に恋している様子であるのは明らかであった。(そもそもリクは目の前の女子生徒と話したことすらない)
そんなモチベーションの低さもあって、リクの態度はいつも以上におざなりで酷いものであった。
「ごめん、キミのことよく知らないし、相手の都合を考えない人は苦手なんだ」
「なっ!」
絶句している彼女をよそに、リクは足早にその場を立ち去った。
「ヒュウ。もてる男は辛いね~」
「それで?どうしたの」?」
「えっ?彼女結構かわいかったじゃん。断るやつとかいるの?」
「馬鹿、顔だけしか見てないアンタと違って、リク君は繊細なんだから・・・」
囃し立てる男子の声と、リクのことをかわいい男の子(と勘違いしている)鬱陶しい女子の声(リクはどちらかというと細めで童顔である)が教室に戻ってきたリクのことを迎えた。
あの一件以降、目立ちたく無くて、カバーしようと適当にニコニコと気弱そうに見えるようにふるまっていたことが完全に裏目に出たらしい。
どうもリクは「普段は穏やかに見えるのに、男らしさも持つちょっと気になる男の子」というよくわからない地位を同年代女子の中で得たらしく、告白されることが増えた。
同時にボコボコにしたスカイボール部の部員の一部の妬みもあいまって、学校内で微妙な立場になっていた。
(ハア)
内心でため息をつきながら、クラスメイトを全てスルーしてリクは自分の席へと向かう。
「や!ストレスたまってるみたいだねぇ」
「や、一部は確実にお前の責任だから。ミク」
「なにをおっしゃるか。私は広報部員としての役割を果たしただけですよって。なにせ学校全体の約1/6が参加する校内対抗練習試合を、われら広報部員が学校のHPにアップするのは伝統的なことですからな」
「ふざけるな。なら途中退場したやつより、優勝チームのエースに重点を置け!なぜ部員でもない俺があそこまで取り上げられているんだよ」
すでに諦めながらも、一応言葉では抗議を伝えておく。この抗議も通算5度目得ある。それだけ抗議したのだからミクの対応も、もはや定型文と化していた。
「そりゃ部員でもない新進気鋭の部外者が活躍した。その方が面白いからに決まっているじゃない」
「俺の意思と個人情報の保護はどこへ行った」
「いやー、我々にも報道の自由というものがありますからね。それに最初にリクを呼んだ中に私がいた時点で予想していたことでしょうに」
「・・・ハア」
再度深いため息をついて、リクはもはや抵抗を諦めた。
(やはり消極的な対応をするより、積極的に男子の友達を増やすことで、いわゆるリア充の仲間入りをするのが正しかったのでは?)
(いうな、ミオ。たとえそうだったとしても後の祭りだし、最終的にはこちらの方が利益は大きい・・・ハズだ)
(ローリスクローリターンな消極策にしか思えませんが?)
(ハイリスクハイリターンで失敗するよりはましだ)
(・・・まあリク様がそれでいいというのであればかまいませんが、私たちは基本リスクを減らす方が得意だということをお忘れなく。多少リク様がリスクの高い方をとってもそのリスクは減らせますが、リターンは環境に依存する以上増やせませんから)
(わかってるよ。信用していないわけではないって)
(ならいいのですが・・・)
サポート用の人造魂魄であるミオにまで叱られたことでリクは若干落ち込んだ。気分はもはや最悪である。
(今日は学校が終わったらすぐさま帰ろう・・・)
そう思っていたリクではあったが、リクの思いもやらないところで事態はまた、リクにとって悪い方向へと変化するのであった。




