リクと戦争
本日1話目
「それで・・そんなに二人して息を乱して汗を流しながらここに来たわけか」
「ええ、まあ」
「ック、クックック」
「・・・アスカ先生、自分のことを笑うために呼んだのであれば、もういいですか?帰りますね」
そう言って帰ろうとしたリクに、ミクはもはや無言でヘッドロックをかけた。その様子を見てアスカがさらに爆笑する。
「クックック・・アッハッハ、ハッハッハ、ハーァ・・・つくづく面白い男だな、リク。俄然私は気に入ったぞ、リク。リク、お前スカイボール部に入れ」
「お断りします」
リクは食い気味に言った。
「即答か、まあ、最初の印象が最悪だろうからな。無理はないが・・・一応聞いておこう。理由はなんだ?
あれだけの技術を身に付けるほど練習しているんだ。スカイボールが嫌いではないのだろう?」
「見るのは嫌いではありませんが・・・単純に仕事で時間がないから無理です」
「ふむ、リクは働いているのか」
「ええ、孤児ですから」
なにか言われる前にリクは先手を打った。普通の教師であればこれで引き下がったであろうが、あいにくとアスカは普通の教師ではなかった。
「が、しかし、それは理由にはならんな。孤児であっても、働きながらでもスカイボール部に入ることはできる」
「そこまで頑張れるほど、私はスカイボールが好きではありません」
「なるほど。そう言われてしまっては返す言葉がないが・・惜しいな」
アスカほどの元スカイランナーにそこまで言われて悪い気はしなかったが、リクはそれでも応じる気はなかった。それは単純に『本気を出せない、出すことを許されないスポーツ』にそこまで魅力を感じないからだ。
リクの知っている魔法技術を使えば、ルールの範囲内でさらにすごいパフォーマンスをリクは発揮できる。
しかし、それは許されない。リク自身が許すことができない。世界に与える影響が大きいからだ。場合によってはその技術で戦争が激化するかもしれない。リクはその可能性がある行動をとることを自身に許可できない。
戦争を何度も体験したことがあるリクだからこそ、許すわけにはいかないのだ。
だからリクはスカイボールで本当に本気で戦うことができない。それは相手選手にとっても失礼であろうし、自分自身もつまらない。だからやらない。リクはそう考えていた。
赤の他人が新しい軍事技術を開発するならともかく、リクは自分自身が戦争を一変する技術をこの世界に伝えることを許容できるほど、リクの心は強くなかった。
先ほども述べたが、リク自身が戦争という名の地獄を何度も体験している。そのためリクの戦争嫌いは相当だ。たとえ自身が死ぬことになっても技術は外に漏らさない。
リクはそう、心に決めている。
さすがにリクのそんな内面まではわからないだろうが、リクが一切妥協する気がないのを感じ取ったのかアスカは諦めたようである。
「ハア・・・仕方がない。リク君。キミのことは諦めるとしよう。しかし、スカイボールがしたくなったら、いつでもうちの部に来るがいい。歓迎する。それまでには、もう少しまともな試合ができるように部員たちをしごいておくとしよう」
その言葉に練習中の大半の部員たちが青ざめた顔をしたが、ジンやタケルなど一部の選手は逆に好戦的に笑って見せた。
「おい、絶対また来いよな!リク君。我が部はいつでも君を歓迎しよう!」
「また一緒にやろうぜ、リク」
「ハイハイ」
リクは苦笑いをしながらアスカにあいさつした後、スカイボール部を後にするのであった。




