覚醒と黒歴史
本日3話目
覚醒は、気持ちのいいものとは言えなかった。すでに怒りはなく、あるのは単純な羞恥心のみである。人生経験では300倍以上もあるはずなのに、みっともなくキレて、新しい黒歴史を創造したのだ。
(あ~、いい。本当にいい天気だなぁ)
しかして!目を覚ましたリクは全力で現実逃避をしていた。そんなリクをよそに冷静なミオが周囲の状況を判断する。どうもここはキサラギ第一高校の保健室のようである。
(おはようございます。リク様。身体に異常はありますか?)
(あ~、ないよ。ミオ。体調管理ありがとね、ザク)
(フン。謝るくれえなら、最初からすんじゃねえ。俺はもう研究の整理に戻るぜ)
(うん、わかった)
(~♪)
(あ、うん。リサ今は音楽いいや)
(そうですか?ではそのように)
(ん、元気ない。帰ったら体貸して。おいしいごはん、つくる)
(うん、ありがと。ミサ。うん、そうだね。さっさと帰っておいしいごはん食べて、すぐ寝て、忘れよう。そうしよう)
そうしてリクは体を起こして、周囲においてあった荷物をまとめ始めた。幸い、というか、なんというべきか。すべての荷物はベッドの周りにおいてあった。借りていたスカイシューズの類がないことからも、誰かが気を利かせてくれたらしい。
「別に無理やり連れていかれたんだから、挨拶の必要もねえよな」
リクはそう自分に暗示をかけながら保健室をでようとする。さすがに保健室の先生には一筆書いておいたので大丈夫であろう。そう思って保健室を出ると、そこには今会いたくない人物がいた。が、当然リクはそれを無視した。
「いや~、やっぱり私の目に狂いはなかった。さっすが、リクだね。って、ちょっと待って、無視しないでよ。話を聞け、いや、待てって、わかったから!謝るから!止まr・・ださい!リクさん!」
完全に無視を決め込んでいたリクであったが、さすがにこれ以上付き合いの長いミクを無視するわけにはいかず、しぶしぶとミクに応じた。
「なに?ミク。俺は今、ものっっ凄く帰りたいのだけど?」
「やっと、止まってくれた。いや、さっきの試合の・・・」
「シアイ?ナンノコトデスカ?」
「えっ?」
「ボクは単純に体調が悪くて保健室で休んでいただけです」
「マジかこいつ・・・」
ミクの目にはありありと「本気でなかったことにするつもりか?できるわけないだろう、あほか、こいつは・・・」、と書かれていたがリクはそれも丸きり無視した。
「じゃ、そういうことで」
呆然としているミクをよそに、リクはシレっと歩き始める。ミオはあまりにも自然な動作に最初は反応できていなかったが、すぐに自分が何をしに来たのか思い出したのか、リクの服をつかんで止めた。
「ちょ、待てって。って、マジでこいつ逃げようとしてやがる。スカイボール部の先輩方とアスカ先生が、目が覚めたらリクのこと呼ぶように言っているんだよ!って、おい聞け!」
ずるずるとミクのことを引きずってでも帰ろうとするリクを、ミクは全力で服をつかんで止めようとした。
不毛なこの争いが終わるのは、保健の先生が戻ってからのことであった。




