試合結果とブラックアウト
実は、リクのスピードはそれほど速くはない。直線距離のダッシュなら、圧倒的に体格のいい3年に分があるだろうし、1年でもタケルを含めた数人の有望な選手なら勝てるだろう。にもかかわらず、誰もリクには追い付けない。それには3つ理由がある。
1つ目。霊視による初動の速さ。敵味方合わせたすべての選手の思念波を感じ取り、相手の行動を予測、そしてそれの逆を突いて行動する。他の選手はリクより常に2テンポ遅れて動き出しているのだ。
2つ目。『アクセラレーター』。相手の読みを外したうえで、リクはさらに小刻みな切り返しを動きに取り入れている。小刻みな切り返しは、足腰に相当の負担を強いるが、『アクセラレーター』でそれを軽減。逆に反発力を利用して加速しているのだ。
3つ目。単純に経験の差。ほとんどの選手はせっかく宙にいるにもかかわらず、鉛直方向へのパスは利用しても、鉛直方向への自身の移動は行わない。正確には、よほどレベルの高い大会に出場選手でもない限り、行えないのだ。
普段彼らは実践形跡の練習ももちろんするが、ハンドボールによる仮の練習を行うことが多い。理由は単純に体力が持たないからだ。『3次元機動ができればエース確定』。それは高校レベルのスカイボール業界でよく言われていることなのだ。
なによりリクは『アクセラレーター』を利用して体力の消費を少なくし、効率よく上下運動を行っているが、他の選手はただの風の障壁魔法で地道に上に登っていくしかないのだ。
いきなり障壁をなくし、下に落ちたと思ったら、『アクセラレーター』で元の高さまで一気に元の高さまで戻る。そんなふうに高機動を行っているリクとは、同じ距離を動こうと思えば疲労度が全く違う。
敵になりうる選手は、リクのことを前から知っていてリクに勝つことを目標として練習していたタケルとキャプテンのジン、それに3年の一部の選手しかいなかった。
もっとも・・・
(そろそろだな)
(了解です)
ザクの判断に対して冷静にミオはうなずいた。
リクがこんなめちゃくちゃな機動をしているのは、後先考えず体力を消費しており、かつ、人造魂魄たちが冷静に対処しているからに他ならない。
そもそも『怒り』という感情はスポーツにとって良いものとはいえない。実際にその通りにリクの動きは無駄が多く、さらに消耗を加速させていたのだ。
結局、第一試合終盤でキレたリクは(ジンの奮闘と、リクの最後の追い上げにより勝利)、続く第二試合には勝ったが、第三試合中盤で突然気絶し(魔法の過剰使用と、過度な体力の消耗によるブラックアウト。
リクの今世の体のスペックは文字通りCランク程度で、それほど高くない)、リクのチームはリクとジン以外は最悪のチームワークを見せていたこともあり、第三試合と続く第四試合であっさりと負けるのであった。




