リクの目指す平凡な日常
設定の説明が多いです。
上手く設定を説明文で無く書く方法がわからん
後で書き直す可能性大です。
一見すると現代の地球と違いが判らないほど類似した世界。その世界で、これまた現代日本社会とすぐには見分けがつかないとある海洋国家。ヒノモト。
そして、またもや日本のありふれた高校と見分けがつかない高校、キサラギ第一高校。そのとあるクラスで、これまたありふれた一般教養である数学の授業が行われている。
真面目に聞いている生徒も、つまらなそうに退屈を隠そうともしない生徒も、寝ていてもはや授業を聞いていない生徒もいるあたり、本当に一見すると日本の高校の一風景にしか見えない高校。
それがこの物語の主人公であるリクのいる高校だ。今もリクは授業を聞きながら普通の高校生らしく、うつらうつらしていた。
キーンコーンカーンコーン。授業の終わりの鐘がなった。どの世界でも、いつの時代でも、授業の終了を告げる鐘が鳴り響くと同時に、静かだった教室が慌しくなっていくのは不変の理らしい。
そんな中、リクは他の生徒より反応が遅れている。しかし、これまたありふれた光景だろう。
(リク様。授業が終了しました。覚醒してください)
(ん?おお、わかった。ありがとう、ミオ)
ふあーっと、伸びをしながらどこか間の抜けたような顔をする16歳の少年。
どうやらリクは本当に寝ていたようである。ありふれた容姿。良くも悪くもなく、普通。しいて言えばブサイクではない。リクはそんな少年だ。
しかしリクは、ごく普通の少年に思えるが2つ大きな秘密があった。それは・・・
(リサ。音楽止めていいよ。ありがとね)
(いえ、それが私の存在意義なので・・)
1つ目。それは彼が多重人格であること。(上記の会話も正確には別の人格との『念話』である)もっとも、正確な意味での多重人格とは違うのだが、ひとまずそれは置いておこう。
とにかく彼には主人各以外に5つの人格(正確に言えば従属する人造魂魄)があるのだ。
それぞれの人格は独立しており、主人格であるリクのサポートに回っている。いわばAIだ。
本来ならば怪しまれそうなものだが、リクは長年の経験からそのことをうまく隠しているので、普通の人にはそうとはわからないであろう。
また、授業中に音楽聞いているのかよ!と突っ込まれるかもしれないので、補足すると、『今回』リクがいる世界は魔法のある世界であり、魔法でリクにだけ聞こえるように音楽を流していたのだ。
ちなみに音楽を流していたのはリクの持つ人格の1人、リサである。
2つ目。1つ目も普通に考えればとんでもない事実であるのだがこちらの方がもっととんでもないかもしれない。それは、先ほど『『今回』リクがいる世界』と述べたことからもわかるように、彼が『異世界転生を繰り返している』ということである。
『異世界転生』それは彼が最初にいた世界である『地球』では物語になるほど身近な言葉であるが、ほとんどの世界ではその概念すらない。
ましてやその事象を確認するのは不可能であろうし、自称転生者を名乗るものがいたとしても、ただの『イタイ人』であろう。
なぜ、『異世界転生』なんて意味不明なことに巻き込まれているのか?それはリクにもよく分かっていない。
わかっているのは少なくとも彼には『今いる世界では一般に普及していないような知識』や『何回もの人生を繰り返してきたという経験』がある、ということである。
最初のうちは戸惑ったり、大きな失敗をしたりしたが、記憶している限り300回もの人生の記憶を持っている今では、異世界転生という事態にも、もう慣れたものである。
実際、今では彼が様々な世界の知識を得て生み出した『人造魂魄』という、いわば超高度なAIを積んだ人格に思考を振り分けて楽をするぐらいである。(その過程で彼は完全記憶能力者になっている)
つまりその『人造魂魄』たちが先ほど述べたリクが多重人格である理由である。
先ほどリクが名前を呼んだ『ミオ』という人格は、簡単に言えば生活全般の情報収集を兼ねたサポート用のAIで、自分で処理するまでもない情報(今回でいえば学校の授業)を処理してもらっている。
同じく『リサ』には芸術(地球でいうところの音楽、映画、文学等のカルチャーやサブカルチャー全般)の知識の整理を担当してもらっているのだ。
300回もの転生で得た知識は膨大で、下手に世界に漏らすと危険なものもある。そのため、それぞれの人造魂魄に知識の整理と、補佐を割り振っているのである。
高度な技術は戦争を激化させるのは自明であるし、たとえ芸術であってもそこに使われている技術は戦争から転用されているものであることも多いからだ。
例えば、よく地球のライブ等で見られたスポットライトのようなものであっても、戦時中は情報伝達の高速化に使えたりする。そのため、おいそれと使えなかったりするのだ。ということで・・・
(何事も、平々凡々。下手なことはしない方がうまくいくものだね。それなのに・・)
たった今クラスに入ってきた、ザ・リア充といった感じの少年に全力で気が付かないふりをしながら、一方で予定調和として諦めるという器用なことをリクは今現在していた。
「よお、リク。せっかくの昼休みなのにしけたツラしてんなぁ」
「(うわ、きたよ)・・・なんの用だよ。タケル」
「なんの用とはご挨拶だな。一緒に飯を食わないかと誘いに来たんじゃねえか」
そう言いながらタケルは空いていた椅子を借りてリクの方へと向き直った。
「昔みたいに、Aクラスの取り巻きと一緒に食えばいいじゃん」
「おいおい、それはねえだろ。わざわざCクラスまで来たってのに」
「俺は、1人で落ち着いて昼は食べたいんだよ」
「まあ、いいじゃねえか」
そう言うとタケルはリクの目の前で自分の弁当を食べ始めた。リクはそれを眺めながら、ハアとため息をつきたくなるのをグッとこらえてリクは自分のご飯をカバンから取り出した。
ここでクラス分けの話をしておこう。魔法の世界においては魔法師としてのランクは非常に重要なファクターである。
クラスが示す通りタケルのランクはA、リクのランクはCであり、普通であればタケルがCクラスのリクのクラスに来て一緒にご飯を食べるということはまずない(その逆は往々にしてよくある)。
ましてやタケルはAクラスの中でも群を抜いて優秀で将来のSランクは確実視されているぐらいなのだ。そしてタケルは顔もいい。いうなれば超リア充である。
(だから嫌なんだよ)
一気に高まった周囲の女子からの熱い視線(当然タケルへの、である)にうんざりしながらもリクもご飯を食べ始める。
「相変わらず、美味そうな飯食ってんなぁ」
「やらんぞ。お前とおかず交換なんてうんざりするからな」
「そこまで言わなくてもいいじゃねえか」
「うるさい。お前のおかげでこちとら、女子の対応が面倒になったんだから愚痴ぐらい言わせろ」
「いやー、モテる男は辛いね」
「ウザっ」
リクが本気で引くとタケルは少しばかり慌てた様子だ。
「おい、マジで言うなよ。冗談だって」
「マジなのも仕方がない。なにを隠そう文字通り本音だからな」
テンポの良い会話は、リクの思いとは裏腹に彼らの仲が良いことを示していた。
「相変わらず、きっついなー。そんなんじゃ女子にもてねぇぞ?」
「安心しろ、タケルにだけだから」
「しかし、女子の対応がめんどくさいというのであれば、リクのせいで俺だって多少影響受けているぜ?」
リクのさっさと帰れという雰囲気をものともせず、タケルはリクに意外なことを言い出した。リクは本当に心当たりがないので、当然否定することにする。
リア充に嫉妬はするが、リア充になりたくはない。なぜなら自分の自由時間が無くなるから。これはリクのまごうことなき本音であり、だからこそ平々凡々な日常を目指しているのだ。
なによりどうせ仲良くなろうがお前ら死んだら俺のこと忘れるだろ?だからだ実際どうでもいい。そんな酷い考えもリクにはある。
300回の人生は今でこそ人造魂魄たちのおかげである程度楽ができているが、当然ながら良いことばかりではなかったのだ。
「ハ?んなわけ・・・」
「これがあるんだよねー」
突如二人の会話に割って入ったのは、快活そうな小柄な体格の女子だった。どちらかと言えば可愛い系で、その実、男子からの人気も高い。
そしてさらに望まぬ方向に状況が悪化したことを感じとり、リクは一気に疲れた表情をした。
「ミクか・・・」
「おーっす」
「おーっす。そうそう実際、リクって最近女子からの人気が高くなっているんだよね」
ミクと言われた少女はタケルにそう挨拶を返しながら、椅子に逆向きに座り背もたれに両手を、その上に顎を置いた。どうも体勢から見て昼休みの間中ここに居座るようである。
「はあ?平々凡々に生きているフツメンの俺が?ありえんだろう、冗談でもやめてくれ。俺の目標はあくまで『平々凡々』。普通に暮らすことなんだから」
厄介な奴がまた1人増えた・・・そう思いながらもリクは予定通りその言葉を否定した。リクは物語の登場人物のようなリア充生活を望まない少数派の人間なのだ。
「「『平々凡々』ねぇ・・・」」
「なんだよ」
まるで息を合わせたかのような二人の返答にリクは思わずたじろぐ。何回も転生しているとはいえ、中身はもともと地球の普通の男子高校生。
文字通り何回もの人生の経験と知識があるというだけで、チートがあるわけでもなく醜悪な環境の世界では鬱病になったりもしている。
リクが優れていることと言えば、何回も生きてきた結果、自分の性格について嫌になるほどよく知っているということぐらいである・・・・と、本人は思っている。
ぶっちゃけると、チート能力はほとんど体に宿るものなので、時には寝たきりの人生を強いられていたリクからすると、転生なんて意味の分からないことに巻き込まれて、意地汚く生き足掻いている凡人というのが彼の自分自身に対する評価なのだ。
大半の知識も自分で気が付いたことではないし、時には戦争を激化させるような技術の情報を漏らして後悔したこともある。(だから人造魂魄を創造しサポートに当てているのだ)
しかも人造魂魄という技術もとある世界の天才から得た技術をもとに生み出したものなので、リクはあまり誇っていない。
(しかし、それぞれの人造魂魄そのものについては誇らしく思っているのは本当である)
解せぬ、という顔をしながらも黙々とご飯を食べるリクを見ながら、ミクとタケルの2人はため息をつくのだった。
ファンタジーの設定をうまく書ける人は天才だと思う・・・
いつもつまらなくなると小説を消す悪癖があるのですが、この小説は「とにかく書きまくれば多少は書くのが上手くなるだろ!」
という淡い希望の元40万字ほどストックを書き溜めたものなので、確実にそこまでは続きます。
序盤は設定の説明回が多くつまらないかもしれないので読み飛ばしてくれても構いません。






