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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 3
93/180

黒いミント ⑦


目を覚ました。見覚えのない暗い部屋。私はここで手足をイスにくくりつけられている。

いつもだったら抜け出すことは簡単。でも、動かない。

白い壁に囲まれたこの部屋で、私は息をすることもままならない。



「目、覚ました?」


『お前は…』


「どうしたの?そんなにびっくりした顔して。」



ずっと、どこかでひっかかっていた何か。こいつが、目の前にいる一人の男が、何かを知っている。


でも、私の中では何も思い出せないんだ。



「ねえ、僕が誰だか分かる?」



ずっと流されているビデオ。その中で動き回る男の子。耳元で話されている声と、息遣い。

一致するようでしない。



「ねえ、聞いてるんだけど。」


『分かるはずが…』


「あるよね?」



“ ない ” 。その言葉を言わせてもらえない。

あるって、その一点張りで、拒否権なんて私にない。


華は無事なんだろうか。あいつに、何もされてないだろうか。


私の脳内に不安がよぎる。



「何を、考えてるの。」


『何も、考えてなどいない。』


「黒沢華のこと、とか?」



図星だ。思わず目が点になる。

こいつは、私の何を知ってるのか。華の何を。


“ ひーちゃん!! ”



『やめろ!』


「はは、何を?」



口元に指を当てながら、そう言う。笑いながら、私をじっと見つめるんだ。


ずっとリンクしてた。見知らぬ男の子の残像。今、目の前で流れてる男の子のビデオ。きっと、こいつは私に何か関係があって、このリンクの正体だ。



「ふふ、せいかーい。」


『呑気に楽しんでいるようだが…』


「どれだけ嫌がってもやめないよ?」



“ お前の嘘にはもう、騙されない。 ”


絶句した。嘘。もう騙されない。私が、こいつに何をしたというのか。

ズキズキと頭が痛む。もう、嫌。



「言っただろ。嫌がってもやめない。この痛みは、僕よりも全然優しいはずだ。」



その言葉と同時に強くなる痛み。手足がくくりつけられている以上、痛みを和らげる方法すら見当たらない。



『いっ…』


「痛いか。もっと苦しめ、もっと泣け。お前の苦が僕にとったら蜜だ!」



もがき苦しみ、泣き叫んで、人の不幸を喜ぶ狂ったやつ。

私は気づいたら、頬を涙で濡らしていた。



「あはは!もっと泣け!涙を見せろ、黒木ひなた!」








ひなた。あなたはどこにいるの。助けてよ。

救いにきて。私には、やっぱりあなたが必要。

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