黒いミント ⑥
急に壁に飾ってあった本棚から、本がバラバラと落ちる。それと同時にひなたの姿が消えた。
「ひなたは…!」
「黒沢華。よく覚悟しておくことね。」
お父さんがいるにも関わらずそんなことを言ってくる。
なんで。なんでなの。
「お父さん!結婚はやめたほうがいいって!」
「華!そんなことを言っても無駄よ。この人はもう洗脳済み。もう、私のおもちゃなんだから。」
「だからって…!」
狂ってる。今のこの人に何を言っても無駄。この人の耳は耳としての役割を果たしてない。
「あんたも、ひなたの元へ…?」
そっとかざされる手のひら。覚悟とは、このことか。
でも、そんなはずは…。
こんなにピンチなのに、意外と冷静にみてる自分がいて。
「あんたも行くがいいわ!!」
目を閉じて、歯をくいしばると、また大きな音が聞こえる。突然の大きな音に驚いて、肩がビクッと震える。
静かに目を開けると、彼女が壁に叩きつけられて、膝から崩れ落ちていた。
もう片方の方を見てみてると、そこにいたのは
『大丈夫!? 華ちゃん!!』
「美奈子…さん?」
「大丈夫?華ちゃん。」
いつも冷静にみてる、美奈子さんとおばあちゃんだった。
安心したからか、私も膝からへにゃりと座り込む。
『大丈夫!? どこか怪我でも…』
「その前に…」
パチン、と鳴らされた指と、同時に消えて行く彼女。いつの間に、お父さんも消えてて。今現在どこにいるかは分からない。
「あれ、ひなたちゃんは…」
「ひなたがいないの…!」
言葉足らずのこの口で、どこまで通じたかは分からない。でも、少しでも情報が入って、ひなたを助けることができるなら。
きっと、私はなんだってする。