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会いたい理由 ⑨
「え、」
『神谷貴一だ。』
「なんで、」
『中島杏子を影から見守ってたんだろう。』
私たちは影からそれを見ていた。
神谷貴一が話しても、中島杏子は聞こえない。それを知ってて話してるのか、よく分からなくなる。
『華、あの能力を使ってやれ。』
「なんで、」
『神谷貴一は話をしてる。きっと、中島杏子に伝えたいはずだ。』
「そんなことしたら…、杏子さんは次がない!」
『黒木さん、黒沢さん、大丈夫です。』
「神谷さん…」
私たちが話していると、後ろに現れた神谷貴一。思わず悲鳴に近い声が出そうになった。
『杏子が幸せそうでよかった。僕はこれからも影ながら見守っていきます。』
「あなたは、それでいいんですか?」
『え…』
『何言ってる、華。』
「だって、生まれ変われば、また杏子さんみたいな…」
『いい加減にしろ。簡単には言えないんだから。』
『僕は、このままでいい。杏子を、見ていたいんだ。』
そう言うと、神谷は姿を消していった。