黒いミント ②
『華。』
「はーい、今行きまーす。」
普通の会話。普通の行動。いつもと変わらない風景なのに、どこか違和感を覚えるのは私だけか。
「えっ…」
『どうした?』
「凛…?」
その場に立っていたのは、涙目の凛だった。いつもは凛としていて、涙なんて、弱音でさえ吐かない凛が流すはずがない。
というのは、偏見なのだろうか。
「どうしたの。とりあえず、中入って?」
「華…。」
何があったか、その裏はものすごく読みづらいが、大体何が起こったかは分かった気がする。
『華、依頼だな。』
「何があったの。」
「あのね…」
**
私にはもともと5個上の彼氏がいた。その彼氏は私たちの大学の大学院に通っていて。まだ付き合って、一年経つか経たないかぐらいだった。
ここ数ヶ月あたり連絡が途絶えていて、音信不通状態。それを、共通の友達に言っても、
「あいつのことだよ? 携帯壊れたんじゃない?」
って言われて。
携帯がもし本当に壊れていたら、彼なら必ず「携帯壊れてるんだ、ごめんね。」って、私と会って言ってくれるはず。
だから…
**
『そんなの、必ずとか分からないだろ。』
「ねえ、その人の名前って…?」
「鳥居小路 翼さん。」
『え…?』
思わず絶句した瞬間だった。こんなにも関わりを持っている人が、近くにいるとは思わなかった。