黒いミント ①
ほのかに香ったミントの香り。爽やかな香りではあるが、あいつがつけてたのは、ミントとは程遠い香りだった気がする。
華と少し似てる…、甘い香り。それなのに、急にどうしたのだろう。
やっぱり、あいつに何か…。
「ひなた、何考えてるの?」
くらっと香る、華の柔らかい甘い香り。やっぱりあいつから香った匂いとはまた違う。
『華の匂いって…、』
「私の香り?少し甘い?」
『いや、そのままでいい。』
あのミントの香りはなんなのか。
まだ、この部屋に残る香りを消し去るように、私は華の香水を振り撒いた。
「え、ひなた!?」
そんな華が制止する声も聞こえずに、華の香水をことっと机の上に置いた。
『おばあちゃん。』
『ひーちゃん?どうしたの?』
気がつけば会いに行っていた。少しでも謎を解かないと。
『これから、何が起きるの。』
教えてくれないと、困るの…______。
机にひれ伏す甘い香り。嫌いだ、嫌い。なんて厄介な匂いだ。
消えてもらうために、ずっと違う匂いで充満させる。でも、匂いは消えない。
「何をしているの。」
『匂いを…、消してるんだ。』
「匂い…?」
『甘い甘い、この香り。』
それ以外に何も言えない。甘い、としか特徴は得られないし、実際に見えているわけでもない。
「甘い香り、ねえ?」
『知らない?この香りの元を。』
「おそらく、黒沢家の匂いよ。」
『黒沢…』
そう、黒沢。こんな甘い香りを漂わせて、まるで “ 私をそっちへ連れてって ” とでも言ってるようじゃないか。
「黒沢華は…」
『俺らの敵だ。』
「ふふ…っ、そうよ、その調子よ!鳳!」
俺は、軽く狂っている______。