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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 3
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親としての義務 ⑥


一瞬にして人が変わった瞬間だった。その一言で、その場にいた誰もが動くことをやめた。

息を吸う音、吐く音と、時計のカチカチ、という音のみが部屋に響いていた。




『…大丈夫か、華。』


「会ったら終わる話じゃないか!お前は、会って、一緒に暮らせばいい話なんだよ!」


『お前…』




私の中で何かがプツンと切れた。あまりにも言い方、というものがあるんじゃないだろうか。


会ったら終わる。一緒に暮らしたら、その一瞬だけじゃない。一緒にいる間はずっと我慢しなくてはならない。




「だから、会いに行こうって!」


「私は会わないし、一緒に暮らす気もない!」


「人が優しく言ってやってる間に聞いとけばいいものを…」




私の中で何かが “ やばい ” と叫んだ。

こいつに、彼に、何があったと言うのか。華と離れて過ごした11年間は、謎に包まれている。




「私は会いたくないの!」




華はその一点張りで、それ以外は口に出さない。私もそれには薄々気づいてはいた。でも、華にも考えがあるのだろう。




『華、何をしてでもやつを家から追い出せ。』




今はそれが一番の策だ。




「…話は、それだけ?」


「上から目線で物を言いやがって…」


「終わってるなら、帰って。」




私が知っている以上に、華の意思は強く、誰も止められない。それは、この私でも。


人が変わっている彼を、このまま家に置いておくのは危険。




「お願い…、帰って…。」


「また、来るから…」




華の静かな祈りは届いたらしい。

ガタガタ音を立てて出ていった彼は、ある物を落として、私たちの元から消えていった。




『こんなもの…。』







「龍さん、華ちゃんは…」


「すまない、会わないと言い張ってて…」


「そんな…」




どうしても会わせなきゃいけない。華を彼女に。

どうしたら会ってくれるんだい、華。


普通に考えて、母親を拒む娘なんているんだろうか。




「早く…、私は会いたい…な。」


「すぐ会わせてあげるから、綾芽。」




早く、華を。君に会わせてあげるから。早く、はやく。







親とは。娘とは。正直わからない。ただそういう関係だけで縛られている。いなくなっても、家族は家族であって、何ができるのか。何が幸せなのか。お互いに何が必要なのか。


ゴーストアビリティーである前に、一人の人間なんです。

普通の人間と同じように、過去に傷を抱えている一人の生者。



だから、お願いだから。

“ もう二度と私の前に現れないで。 ”

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