親としての義務 ①
「華、会いたかった。」
「なんで…。」
12年ぶりの再会。今まで一切来なかったのに、なんで今になって華の元へ来たのか。
華も顔が引きつっているじゃないか。
「会いたかったよ、華。」
『なんで、今になって…。』
私も会いたくないのは事実であって、きっと華は私以上に会いたくなかったと思う。
それを今から蒸し返すなんて。
「帰って…。」
「華。華のお父さんだよ。」
「嫌よ、帰って…。」
帰ってしか言えない華と、自分の気持ちを強引に押し通そうとする父親と言われる男。
あまりにも、自分勝手すぎて、呆れる。
何が目的と言うのか。何がこいつを動かして、何を華のところへ巡り会わせたのか。
「…華、また来るよ。」
華の一方的な拒絶に、男は諦めたのかそれだけいって、華の元を離れた。華はすぐにでも崩れ落ちそうなほど、足が震えていて。
『大丈夫か、華…』
私がそう声をかけた時には、ポロっと涙が伝っていた。
少し紅色の頬を涙で濡らしてくれるとは。
私は華の涙を見たくて戻って来たわけではない。
「ひなた…」
『きっと、また来る。でも、会わなくていい。』
私が守るから。私が会わせないから。
わざわざ会う必要はないんだ。今さら何しに、何を伝えたくて華の元に来たのか。意味がわからない。
少し曇っているこの空を、どこか心の中で冷静に見ながらも、華の涙と関係しているように感じた。
その次の日から、奴は毎日のように華の前に現れた。
「華。」
「…私は会いたくない。」
その度に、華は昔のことがフラッシュバックして涙を流す。
流れるその涙を私はただ見つめることしかできなくて、守れているのか不安でしかないんだ。
「ひなた。」
『どうした。』
「お父さんは、どうしてここに来たんだろう。」
『お前が、その謎を解きたい、と言うのなら話してみればいいじゃないか。』
近くで見守ればいい。何かあったら私が守る。それだけできっと違う。
そう思うは思うけど、何か違う。
「私が会っていいの?」
『お前は娘なんだ。父親にあって何が悪い。』
そうやって背中を押して、少し後から戸惑いを感じだす。
私がやってることは、これで合ってるのか、と。華を危険に晒してないか、不安なんだ。
…って、実の親にそう思うのも違うのか。