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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 3
80/180

目的 ⑦



「ひなた、何飲む?」


『ホットレモン。』


「わかった。今から作るね。」




レモンの力を借りて、私は頭を使おう。

昔から、私が幼い時から、何かと出てきたホットレモン。毎回手作りで作ってくれるから、温かさが心に染みていく。


…作ってもらった。 一体、ダレニ?


しばらくすると、香って来るレモンの匂い。




「お待たせ、ひなた。」


『…ありがと。』



ホットレモンは冬限定。優しい甘さは、きっと華の作り方が上手いから。

他の誰かが作っても、味はまた変わってくると思う。




『今日は、楓はいないんだな。』


「うん。テストが近いみたいで。」


『騒がしい奴がいないと、こんなにも静かなのか。』




いつもより、静かなんだ。冷たい風とか、そういうのが吹いて来る、ということも一切なくて。

ただただ静か。





「まあ、楓ちゃんはひなたに懐いてるからね。」




異常なほど懐かれるこっちの身にもなってほしい。


“ 鬱陶しい ” 。その言葉が一番似合ってる。




「楓ちゃんも、誰かに甘えたい気分なんじゃない?」


『それじゃあ、ほとんど毎日じゃないか。』


「年中無休だね。」




こんなくだらない話も、久しぶりで。お互い、こんなにゆっくりする時間は取れなかったから。

またどこか新鮮で、楽しい。




「今日は一段と素直なのね。」


『うるさい、黙れ。』




素直。そう思われているのであれば、それでいい。

ならいっそ、このまま聞いてみればいいのかもしれない。




『華。』


「んー?何ー?」


『千葉春翔のこと、どう思ってるんだ?』




好き、とかそういうのが聞きたいんじゃない。お前を守るために、必要なんだ、華。

お前だったら、わかるはずだ。




「千葉くんは、私のこと友達としか思ってないよ。」


『そういうことが聞きたいんじゃなくて!』


「…どこか、闇を感じる。光がないような。」




闇。光を感じない。

私と同意見だな。だって、あいつは…。




「なんで急に?」


『気になっただけ。』




また素っ気なく返すけど、華には知らせないのが得だと思う。伝えたら損。


“ ひーちゃんがやろうとしてることは、全て間違ってる。 ”


その言葉が頭をよぎる。

これを伝えた方が得なのか、それとも損なのか。





「ひなた、ホットレモン冷めるよ?」


『…飲んでる。』





少しずつ口に含みながらも必死で考える。

段々私の頭も限界が近づいてくるものだから、どうすればいいのかわからなくなってる。


私の感情とリンクしているのか、外の天気も段々暗くなってきて。これは雨だ。

あっという間に雲が太陽を隠し始める。





「雨…」


『降り出しそうだな。』





その瞬間感じ取る、何かが来そうな予感。でも、今までみたいに悪い予感ではない。

何が、華に用があるのか。





「何か、来そう?」


『そうだな。誰か来る。』





雨がポツポツからどしゃ降りへと変化していて。

そんなタイミングでチャイムが鳴るから。




『華、出てこい。』


「うん。」




華がそのままドアの方へ走っている背中を見ながら、ほんとに行かせていいのか、戸惑いながら華を追いかけた。




「華。」



それなのに、どうして今お前が来るんだ______。










9月22日。私の運命が決まった瞬間でした。それと同時に、私が家族を一斉に失った日です。

当時10歳の私には、信じがたい現実と戦い続けて、今はもう成人して年をとりました。


毎日毎日、家族がいなくなる恐怖に怯えながら、この仕事と向き合い続けた。


私、このままでいいのか、ものすごく不安。

少しだけ、私の願い事を聞いてください。


“ お母さん。もう一度だけ会いたいです。 ”

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