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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 3
76/180

目的 ③



『紫さん、とうとう帰ってきたようですね。』


「今さら、何の用なのかしらね。」


『華ちゃんは、渡してはいけませんよ。』




何を考えているかなんて、正直わかってない。でも、今ここに帰ってくるということは、それなりの覚悟をして来たということ。




『覚悟、してるのでしょうか。』


「きっと、してないでしょうね。後先考えずにここへやって来たのだから。」




いいタイミングで鳴るピンポン。今までにないほど長く、音が響いていた。

…気がする。




「…、お入りなさい。」


「失礼します。」


『やっぱり…。』




案内した部屋で礼儀正しく、畳に座っている。

私は、静かに合図を出して、お手伝いの方にお茶を出すように伝えた。


その間に流れる沈黙は、あまりにも地獄のようだった。誰も喋らず、息を吸う音と吐く音、喉を鳴らす音だけが響く。

全てを吸収して行く壁に、その音がどんどん吸い込まれていった。


すぐにガタガタと襖が開く音が聞こえて、目の前にお茶とお茶菓子が置かれていった。

結局、来るまでは何も喋らなくて、私も苛立ちを隠せないでいる。





「何をしに来たんですか、龍さん。」




彼は実の華ちゃんの父親で。

今さら、何をしに来たのか。




『ずっと黙ってますね。』


「…お久しぶりです、お義母さん。」


「あなたに “ お義母さん ” と言われたくありません。」




やっと口を開いたと思えば、そんなことばかり。あなたは、それを言いに私の元まで来たの。

一つ一つの言動が、全て私の癪に触る。




「僕、黒沢家から身を引こうと思って。」


『…あら。』



身を引こうと “ 思って ” なの。


私はもうとっくのとっくに、黒沢家の人間から赤の他人になったのかと思ってた。


何を思ったのか、彼はカバンの中から一枚の紙が出てくる。




「僕、結婚しようと思って。」


『結婚…?』




その紙をじっくりと見ると、彼の名前と、見知らぬ…




「鳥居小路…?」


「はい。」




なんで、その家と関わりを…?




「新しい生活を始めるんです。」


『何が…、要望なんでしょうか…。』


「何が、要望なの?」




私がそう言うと、彼は真っ直ぐこっちを見つめていた。

しばらくして、彼が口元を緩ませたのを確認すると、こう言うんだ。




「華を、連れ戻しに来ました。」

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