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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 3
75/180

目的 ②



9月22日。華の母である雅がいなくなった日。

世間一体では、この日は命日と言うのだろう。


華が寝ている間に。


私はもう透けて見えない足で、雅がいなくなったあの家へ歩き進めた。

もう、いなくなってからこんなに経つのか、と一人思い出していると、見たことある姿が先客として、いた。




「雅…。」




なんで、今になってお前がいるんだ…。








私にとって、全てが変わった日。全てが、壊された日。

当時10歳の私にとったら酷なことで、家族がバラバラになるという恐怖。

そんなことを今日に限って思い出す。




「あれ、ひなたが…」



いない。どうして。なんで。


私の頭をぐるぐる巡る、あの記憶。





「ひなた!」




家中を探し回っても、ひなたの姿は見当たらない。

絶望に支配された私は、そのまま膝から崩れ落ちて行く。




『…お前、何してるんだ。』




その声に、私は最初気づかなかった。でも、ふわっと香るりんごの匂い。ゆずとも、フローラルとも、ラベンダーとも、全く違う。


そこでやっとわかったひなたの存在。




「ひなた…?」


『何してるんだ。まだ9時なのに。』


「ひなたが…、いなかったから…、」




怖いのよ。また起きたら大切な人が、愛しい人がいなくなってる、なんて。

考えたくもないけど、もし、だなんて。ひなたが一回いなくなってから、怖くてたまらなかった。


信じてたけど。だけど、やっぱり…。




『大丈夫だ。いなくなって悪かった。』




そう言って、私の頬にそっと触れて、温もりを直に感じる。ふわっと感じたひなたの体温と、優しさ。そこで、また改めて分かった。抱きしめられている、と。




『…もう少し、ゆっくり休め。華。』



その言葉を最後に、私の意識は薄れた。

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