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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 3
74/180

目的 ①


9月。私にとってはある意味トラウマなこの月。私の誕生日もあるけど、お母さんたちがいなくなった月でもある。


私はこの月が、二度と来なくていいと思うほど。



「はーなちゃん。」


「え、」


「あれ、忘れたの?同じ講義受けてる、千葉だよ! 千葉春翔!」



今日に限って、泉も凛もいない。二人して用事があるんですって。

男の人が苦手っていうのもあるけど、なんか、気まずい。



『何してるんだ、華。』


「少しだけお助け願いたい。」


『もう少しで、楓が来るぞ。』


「あの、千葉くん。」



いい案をくれた。


やっぱりこの安心感が好きだな。さすが、ひなた。



「わかった、また明日ね。」


「うん、またね。」


『ほんとに、男が苦手だな。』




苦手なものはしょうがない。苦手なんだから。


ひなたの呆れ顔を横目に、そんなことを思った。




「あの人さ、どこか気になるんだけど、」


『そうか?』


「うん、なんか不思議な感じ。」


『でも、それは私も感じていた。』




いつもの人と話す感じとは違う。それを説明しろ、と言われたら語彙力が無さすぎて、話せないし、説明はできないけど、どこか違う。


直感に過ぎないけど、やっぱり違うんだ。

いつも通りだとしたら、多分私は会ったことない人だと思う。




『華、自分でもわかってるとは思うが、あまり油断するな。』


「わかってるよ。でも、なんか久しぶりね?」




いつもこんなに忙しくはないし、ひなたにこう言われることも珍しいから。

思わずそんなことを口走ってしまう。




「あ、華ちゃん来た。」


「紅葉さん!」


『…華、知り合いなのか。』




どこか怒りを感じた。ひなたの口調が違うことは明らかで。いつも通り、は通用しない。




「今日、依頼しに来たんだけど。」


「わかりました。それでは、家へ。」


『華、やめておけ!』




そんなことも無視して、私は紅葉さんと歩いた。









家に着くと、彼女は、奴は口を開いた。




「あのね、黒木さくらさんに会いたいの。」


「黒木…、さくらさん、ですか?」


『…っ、お前…』




何も考えられなくなった。さくらは私の母で、とっくのとっくに、魂ごと無くなっている。

どれだけ会いたいと願ったところで、もう会えない。




「紅葉さん、私たちゴーストアビリティーにも限界というものがあるんです。」


「会えないの?」


「…はい。」


「…なら、しょうがないわね。」




今すぐにでも泣きそうな表情で、ちらっと私を見た。




『え、』




奴は、私が見えているのか…?


でも、一瞬口元が歪んだ気がした。それは、私の気のせいなんだろうか。

私がそんなことを考えていると、いつの間にか奴の姿は消えていた。




「ひなた?」


『え、』


「紅葉さんなら、帰ったよ。」




いつも通りの笑顔で、優しく言ってくれる。

きっと私の異変に気付いてたのかな、なんて。

でも、どうして奴がここにいるのか、わからない。




「こんにちは。」


「楓ちゃん。」




急に現れては、私の方を見て微笑む。


華とはまた違う、柔らかい匂い。そして、安心する。

今回ほど、難しい問題はないのかもしれない。


そんなことを考える私を照らすように、窓の隙間から太陽の光が覗いていた。

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