表情の裏 ⑥
あの日から数日経った。
『華。』
「ん…」
『お客。』
「嘘っ!」
『うん、嘘。』
相変わらず、ひなたは意地悪だ。あかねさんとはまた違う、この感じが好きだったのを思い出した。
「ひなたのバカ。」
『そういうこと言うんだな?』
また出て行かれたら、私が困る。次こそ仕事を辞めるしか道は無くなってしまう。
『辞めるな。もう出て行くつもりはないから。』
「え、ほんとに!?」
『滅多なことがなければ。』
上げて落として行くから、また私の心はひなたに連れて行かれる。
でもそこが楽しいところであって、私がひなたと一緒にいたい理由。
「ねえ。」
『なんだ。』
「あかねさんとは、本当に親戚?」
『ああ。』
本当に聞きたかったこと。ずっと疑問だった。
何が本当で、何が嘘なのか。私には全くわからなかった。
だから…
「あかねさんに、どうして頼んだの?」
だから、教えて。ひなた…。ー
「翡翠様。」
「どうした?」
「無事、白山あかねを排除致しました。」
やっとか。この世から姿を消した。
これで、黒沢華と黒木ひなたの近くでうろちょろするものはいなくなった。
「あーら、残念だわ。あかねちゃん。」
『もういなくなったんだ。』
「そういうことは言ってはいけないぞ。」
「別に、悲しんでるだけじゃない。」
誰も白山あかねがいなくなって悲しんでいる者などいない。
やっと消えたことに喜びを隠せないんだ。
「黒木ひなたは戻って来たか?」
「はい。無事戻りました。」
戻ってきた。
その言葉だけがやたらと強調されたように聞こえた。他の言葉なんて、すーっと風のように受け流していたのに。
『もう?早くない?』
「あら、既に戻ってきてるってことは、それほど華ちゃんのことが心配だったのかしら。」
「そうだな。黒木ひなたの弱点は黒沢華なんだから。」
黒沢華を守るためなら、黒木ひなたはなんでもする。
それぐらいあいつは、黒沢華が大切なんだ。
何をしようともう遅い。
僕が全てを支配しよう___。
私が考えていたことは全て合っていた。どれほど信頼していようと、心から信頼できる人は、ずっと一緒にいる人じゃないとなれない。
私の情報を持ってようと、使えないでしょ?
だって、ひなたのことだから。私を守ってくれてたはず。
ひなたが助けてくれたように、私も守ってあげる。
さよなら、あかねさん。