表情の裏 ⑤
『私は、あなたのパートナーだから。』
「私のパートナーは、黒木ひなただけよ。」
そう、あの子じゃないとダメなの。私のパートナーはあの子じゃなきゃ、ひなたじゃなきゃ務まらない。
『…で、』
「え?」
『なんで黒木なの!私の方が、使えるはずなのに!』
なんで。
そういうあかねさんの目はもう死んでいた。
光を失い、闇に堕ちたような、そんな目。
“ 桔花から伝言です。白山家危険、ひすい ”
『私たちは、白山家は、全ての光なのに!』
あかねさんの苗字、白山、だ。
私は全てを含めて絶句した瞬間だった。
白山と黒木に何があったというのか。
そこまで知る由はあるのか、私に。
『そうだな。白山家は全ての光だな。』
「え…、」
「華さん!」
『なんでひなたがここに…』
私の会いたい人がすぐそばにいる。私の愛しい人。
思わず涙が溢れた。
『お前こそ、華に何をした。』
『何もしてないわ。私が何をしたって言うの。』
久しぶりに見たひなたの姿は相変わらずだ。
よく見れば、ひなたとあかねさんは正反対だな、なんて。
「華さん、大丈夫ですか。」
「どうして…、ひなたが…」
「さっき偶然会ったから…」
そう言って笑ってくれる。中3なのに。
そんな風に見てたら、やっぱりダメだな、なんて考える。
『どうせ、翡翠にでも…』
『翡翠様になんて口を…っ!』
「ひなた!危ない!」
あかねさんが持っていたのは凶器。鋭い刃物。
刺さっては危険だ。
『…何をしようと、お前は華を向こうに連れてくことはできない。』
ひなたがそう言うと、あかねさんは静かに崩れ落ちた。
ひなたは、静かに指を鳴らすと、辺りが明るくなる。目を開いた頃には、あかねさんの姿は見えなかった。
「ひなた…」
『華。やっぱり人を見る目がないな。』
「ひなたがいないからだ…」
「華さん、すごく寂しいって言ってたんですよ?」
「それは…」
なんて、さっきまでのことが嘘みたいに笑っていた。