表情の裏 ④
隣から差し出された冷たい缶サイダー。いつもは飲まないけど、ありがたく受け取った。
「ありがとう…って、え!?」
『何を驚いている。さっさと飲め。』
「ひなた…さんなの…?」
“ うるさい、耳元で喋るな。 ”
その言葉を聞いて確信した。ああ、ひなたさんだって。
安心したからか、私の頬に水が伝った。
『なんで泣いてるんだ。』
「会いたかった…。」
『そうか、』
少し照れながらも、私の頭を撫でてくれる。ほんのり冷たい手が私の体温を奪っていって。
「なんで、あかねさんに…っ、」
『華には言うなよ。』
そう言って明かされた事実は、中3にとっては衝撃的だった。
大人はそこまでやるのか、と少しだけ人間不信になりかけた。
「そんなこと…」
『確かに、断れば簡単だった。でも、楓なら分かるだろ。』
“ 私には華が必要で、大切なんだ。 ”
その一言が全てを語ってる気がした。たった一年。
一年の空白の時間が、こんなにも、冷たくなるとは思わなかった。
『華は?』
「家にあかねさんと…」
『なんで2人にしたんだ!』
「追い出されたんです!」
こんなにも切羽詰まったひなたさんを見ることは、もうないだろう。
だからこそ、私はひなたさんについていくことしか出来ない______。