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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 2
69/180

表情の裏 ②



『華さん!』



その声で現実へと引き戻された。

なぜか頬が濡れていて、視界は濁っていた。



『なんで、泣いてるんですか…?』



優しく問いかけてくる。ひなたは、ひなたならきっと、黙ってティッシュ箱を頭に乗せてくる。

あかねさんくらいだ、慰めてくれようとするのは。




『このまま泣いてたら…、目、腫れますよ…。』




そっと私の背中をさすってくれる。


その優しさを、母の温もりと勘違いして、まだ味わいたかった、なんて思ってしまうんだ。


なんで今になって、私はフラッシュバックを起こしたんだろう。なんで泣いてるの。

私の感情は明らかに迷子だ。


たった一瞬のフラッシュバック。それなのに、こんなにも私の感情を揺さぶるなんて。

私はそのまま安心して、目を瞑った。




起きる時間になって、目を開けて見えた景色は、人がたくさんいる、ということ。

いつもの状況。私が叶えられる願いは生者だけなのに。どうして、私が引き寄せるのは、死者ばかりなのだろう。




『華ちゃんが起きた!』


「え、」


『どうか私の願いを!』




足をすぐに見る。

あー、透けてる。死んでる人。それなのに、私に触れる。

不思議な人、そう思いながら謝った。




「ごめんなさい、叶えられないんです。」




そういうことしか出来ない。

ここで叶えてしまったら、ひなたと会えなくなる。それだけは、どうしても避けたいから。




『どうして…っ、』


「あなたたち、みっともないわよ。」


「あなたは…?」


『え、』




あかねさんは、それを見て静かに表情を変えた。まるで、安心したように、彼女を見ていた。




『なんで…っ、』


「そんなの関係ないわ。華ちゃん、困ってるから。」




そう言って、私の腕を引いて抱きしめてくる。

ほのかに香るフローラル。いい大人の女性という印象で。

美人さんだなぁ、なんて心の中で思ってしまう。




「もういいわよ。」


「あ…、ありがとうございます…。」




にこっと笑いながら、そんなこと言ってくれるから、どこかお姉さんって感じがする。




『…大丈夫ですか、華さん。』


「はい…。」


「ああいうものには気をつけた方がいいわ。」


「あの、一つ聞いてもいいですか。」




“ どうして、あなたはここにいるんですか。 ”


目を開けたら人がいて、気づいたらこの人はここにいた。

名前も知らないのに、この人は知ってる。

どこか、違和感。




「私の名前は望月紅葉。あなたに依頼しに来たの。」


「依頼…?」


「でも、今日はやめておくわ。また来るわね。」





それだけ言って、部屋を出て行ってしまう。

残るフローラルの甘い香りと、どこか混じるゆずの香り。そして、ふわっと柑橘の匂い。

いろんなものが混じって、変な感じ。


私は思わず、その場に立ち尽くした。

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