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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 2
68/180

表情の裏 ①


1人で思ってしまっていた。ずっとベッドに入ったまま動けずに、「ひなたに会いたいなぁ」なんて。

いつ帰ってくるかもわからないのに。


夜で暗かった空も、いつの間にか明るくなっていて。結局眠れなくて、布団から足を出す。




「まだ、2時間くらいは眠れたはずなのに。」




なんて、ボソッと言うんだ。


水を飲みにリビングまで足を運ぶ。ゴクゴクと喉を鳴らしながら、立っていると思わず浮かんでくる家族の顔。初めてだった。こんなこと。

これがフラッシュバックというもの。


私はその記憶に目を向けた。



・・




「華!」


「なあに!お母さん!」




当時6歳だった私は、俗に言うお母さんっ子。

何を思っていたのか、私はお父さんよりもお母さんの方が好きだった。

お父さんとはまた違う安心感ってやつだと思う。




「またお母さんは華なの?」


「しょうがないじゃない。華はまだ小さいのよ。」




玲とは6歳差。私が小学生に上がったと思えば、彼女は中学生に上がるところだった。

華は小さいから。何回言われたことだろうか。でも、認めるしか道はない。だって、事実だから。




「律だって、思うわよね?」


「私は別に。」


「また2人は華に嫉妬してるのか?」


「嫉妬なんてしてないし。」





私たちは理想の家族だと言われた。どこを取っても私たちは目指す家族と。

でも違うんだ。少しだけ。





『雅。お客さんが来るわよ。』





そう、母がゴーストアビリティーだった。

私は小さい時から幽霊が見えて、声も聞こえていた。

生まれた瞬間から、この力を持っていることも珍しい。





『早く準備をしなさい。』


「待って、もう少しだけ…」


『もう来るんだけど?』





って言いながらも待ってくれるのがお母さんのパートナーである、さくらさん。ひなたのお母さんでもある彼女。

美奈子さんとひなたを足して二で割ったら、こんな感じだと思う。





「さくらさん!もう少しでママ行くから!」


『…っ、わかったわ。早く来てね、雅。』





少し厳しくもしっかりと甘やかしてくれる。飴と鞭の使い方が上手な人。

そんな時に訪れる、一つの事件。




『雅、』


「この人は本気で困ってるのよ?私たちは、それを救ってあげなくてはいけない。」


『でも、この人は…!』




お母さんの元を訪ねたのは、死者だった。

ゴーストアビリティーの規則としては、死者の願いは聞き入れられない。

生者だけ、そう決まっているのに。




「死んでても、生きてても、同じ人間に変わりはないわ。」


『そんなことしたら、私たちは…!』


「そうね、消滅だわ。」


『だったら…っ!』


「一緒に消えましょうか。」




玲が16歳、律が13歳、私が10歳の時だった。

私の元から母が消えたことは、衝撃だった。




「お母さんが消えたって、どういうこと?」


「そういうことよ。」




祖母は嘘をつくタイプじゃない。それは誰もがわかっていること。

でも、誰もわかろうとしなかった。




「だから、次は玲ちゃんだわ。」


「嫌よ、私はあんな仕事につきたくない!」


「でも規則よ。指名されたら…」




ずっと永遠にいなくなる。そんなこと当時の私は知らなかった。

玲と祖母はずっと喧嘩をしていた。

最終的には…




「だったら、消えた方がマシよ!」


『玲ちゃん!そんなこと!』




聞こえなければ見えない玲に、美奈子さんが言っても時すでに遅し。

私が眠っている間に、姉2人はいなくなっていた。




「華ちゃん、私の元へ来なさい。」


『そうね、紫さん。』




私は黒沢家の中で、一番幼いゴーストアビリティーとなった。

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