生きる価値 ⑦
美奈子さんの言葉の意味、そして、坂口桔花さんからの伝言である、「白山家 危険、 ひすい」とは。
頭がこんがらがって、何を考えればいいのかわからない。
『何を考えてらっしゃるのですか?』
「次のことに決まってるじゃないですか。」
こういう時に限って、ずっとそばにいるの。
なおさら怪しい。
白山家とは…? ひすいって何…?
謎が謎を呼びまくるから、私の頭は使い物にならない。
「華さん、コーンスープ飲みますか?」
「え?」
「120円だったので、買って来ました。」
“ 買って来ました ” だけがやたらと大きく感じた。
「え、返す。」
「大丈夫です。いつものお礼なので。」
出来る子、それは知ってた。でも、ここまでやられるとやばい。
中学生にお金を出させる、大学生としては許しがたい真実。
ありがたく受け取って、ベンチで待っていると、親子が帰ってくる。
「おかえりなさい。」
明らかに泣いた跡。隠そうと思ったんだろうけど、隠せてない。
「ありがとうございました、黒沢さん。」
「いえ、これであなた方は残り一回となりました。」
残り一回。人生で使える貴重な一回を使ったのだから、もう一回はまた考えて使ってもらわないと。
『相当、泣いたんですね。』
「話したいこと、話せましたか。」
「はい…っ、」
泣いている姿はまるで五歳児。それくらい幼い少女。
私たちは、ただその姿を見ていた。