生きる価値 ④
『あなた、華ちゃんに何をしようとしているの。』
『何もしようとなんてしてません。』
『じゃあ、何が目的であの人のもとへ?』
もとから怪しいと思ってた。
だって急に華ちゃんのパートナーになったら、おかしいって誰もが思うじゃない。
あかねちゃんとひーちゃんは元から仲が悪かったわけだし。
白山家と黒木家は親戚だけど、親戚の中でも、「光と闇」として扱われて来た。
だから、ひーちゃんが代わりにこの子を選ぶことすらおかしいのよ。
『華ちゃんには触れさせないわよ。』
『今のあの人には敵わないわ。』
『何をしようと、ひーちゃんと華ちゃんには勝てないわよ。』
『ひなたが帰って来るかなんて、わからない。』
「連絡終わりました!」
時間切れ、ね。華ちゃん、危険、だわ。
「なんの話してたんですか?」
『なんでもないわ。そろそろ帰らないと、紫さんに怒られちゃう。』
「…そうですね。」
今はまだ2人になりたくなかった。
もう少し、延長してくれないかな。
そんなこと、思っちゃいけないのに。
ひなたが帰って来なければ、あかねさんとは別れられない。
『華ちゃん、また来るわね。』
「はい、また来てください。」
美奈子さんがいなくなったのと同時に、楓ちゃんが紅茶を持って来る。
「お待たせしました。」
「あ…、ありがと、」
楓ちゃんとあかねさんは一切目を合わせない。
この空気に飲まれそうになるけど、私は透明人間になろう。
少し甘い紅茶の香り。今だけは紅茶に溺れて酔っていたい。