生きる価値 ②
「華さん!私グレープフルーツジュースで!」
「あれ?今日はオレンジじゃないの?」
「最近太ったんです。」
女子の恥じらい、というものだろうか。
私にはその感情、…ないな。うん、あきらかになし。
あ、3秒後に誰か来る。直感でそう思った。
ピンポーン。
『来ましたね。』
私はその声を無視して、扉の方へ急ぐ。カラカラカラ、と鈴の音がしつつも、私は彼女らを迎え入れる。
「いらっしゃいませ。」
「華さん、私お茶入れて来ます。」
「うん、お願い。」
こういう時ほど、楓ちゃんは気が利くお嬢さん。
まるで、私の心を読めているように。
『次々と進めてください。』
「ご用件は?」
「亡くなった…母に、会いたいんです。」
来た。ようやく。
ということは、近藤礼子さんの娘さんと旦那さんだ。
今になって、少しだけ理解。
「お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「近藤優里です。」
あ、完璧そうだ。この人は礼子さんに会いに来たんだ。
『会いに来るのが遅いことで。』
「ちょっと。」
楓ちゃんの目が確実に、あかねさんを捕らえている。
まるで、殺意に沸いた瞳。
「それでは、またこちらからご連絡させていただきます。」
「はい…。」
最後まで不安そうなところは、彼女と一緒なのね。
…親子だなぁ、やっぱり。
私も…、なんてね。
彼女たちは、一礼して家を出て行った。
「交渉、行って来てください。」
『はい、わかりました。』
消えたのを確認すると、どこか力が抜けたのがわかる。
それくらい今の彼女には威圧感があって。
できるなら、私はそばにいたくはない。