会いたい理由 ⑥
もうホテルは閉まって、照明も落とされている。窓から月の灯りが差し込んでいて、ものすごく神秘的。
時間もそろそろ三時を迎える。中島杏子も降りて来るだろう。
「遅くなってごめんなさい。」
「どうでしたか?」
「謎が解けました。わざわざありがとうございました。」
その瞳は赤く腫れている。出会ってすぐ泣いたんだろう。そのままずっと泣いて、会話なんてできやしなかっただろうに。
「中島さん、神谷さんと会われてどうでしたか?」
「自殺じゃなかった。ほんとに事故で、望んで私の前からいなくなったんじゃなかった……。」
『婚約者なんだから、望んで姿を消すわけないだろ。』
「ひなたは黙ってて。」
「え、」
私の姿は、普通の人には見えない。パートナーにしか見えないこの身体、ある意味楽だ。
「そうでしたか、ご満足いただけたなら、よかったです。」
「ありがとうございました。」
そうやって、後ろ姿を見送る華。
あいつ、何かを隠してる。私や華が知らない何かを。
「ちょっと、何してくれてんの。」
『本当のことを言っただけじゃないか。』
「確かに事実だけど…」
『言ってしまったことに文句を言うな。』
そう言えば黙る。それさえ知っていれば、華を扱うことなんて簡単だ。
私たちは、満月の夜を歩いて、月光に照らされた。