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黒い影 ⑥
「あかねさん、またいませんね。」
「そうだね。」
こんな時に限って、またいないの。どこか、あやしい。
「心配ですか?」
「誰が。」
「あかねさん。」
心配するはずがないじゃない。あの子だもの。ひなたが頼んだ子なら、心配する必要はない。
私はそう思ってる。
でも、それでも、いくつかそういうあやしい点は出てくるわけで。
なんとも言えない気持ちに包まれる。
「私、ひなたさんに会いたくなりました。」
「…うん。私も。」
あのひなたに会いたい。
好きって言えば「うるさい」って蹴散らして、心を痛めていれば「大丈夫か?」って心配してくれて。
ツンデレなひなたに、ものすごく会いたい。
「華さん、ひなたさんとは何歳の時に?」
「私が10歳の時。もう11年の付き合いですね。」
もうあの日から11年も経つんだよ、ひなた。私たちが初めて会った日、覚えてるのかな。
ひなた、私は覚えてるんだよね。
早く戻ってこようよ。ひなた。
…って、私最近これしか言ってない気がする。
「長い関係なんですね。羨ましいです。」
「そうでもないよ。」
私たちは気づいていないが、時刻は2時50分になっていた______。