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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 2
55/180

黒い影 ④



次に目を覚ませば夜。私、今日一日中ずっと眠ってたんじゃないか、と思うほど。


おかげさまで身体の疲れは十分なほど取れている。




「華さん、平気ですか?」


「楓…ちゃん?」


「はい、楓です。」




寝ている間、何が起きていたのか私にはわからない。

でも、あかねさんがいないのは空気的にわかった。




「とりあえず、無事でよかったです。けがはしてませんか。」


「してないよ。」




心配してくれるところも、楓ちゃんの優しさ。

今の私には、優しさ、なんて感情ないから。




「あ、お客様が来てました。」


「お客様…?」


「はい、清水澄良さんという方が…。」




今回手紙をくれた方だ。




「私がお話を聞いておきました。個人情報もこちらに。」


「え、楓ちゃんが?」




その紙切れに目を通すと、こと細かいところまでびっしりと書かれていた。


電車の事故…、子供を助けるために…。


どこかひっかかる。




「あかねさんは、交渉に行ってます。」


「そ、うなんだ…。」




“ あかねさん ” 。その言葉だけで過剰に反応してしまうのは、きっとどこを探しても私だけ。


別に恋してるわけじゃない。だからと言って、気になるわけでも…、あるのか。




『あ、華さん、目覚めたんですね。』


「…はい、おかげさまで。」


『無事交渉は成立です。明日夜9時30分に桜坂駅に集合です。』


「わかりました。」





そっと布団から出ようと起き上がる。足の指先から冷気に触れて、冷やされていく。





『明日は…、体調管理、しっかりしてくださいね。』




冷たい一言。多分、楓ちゃんは気づいてない。


まるで私、いじめられてる女の子じゃない?

まあ、そんなこと思ってる時間はないんだけど。


あっという間に次の日の午後8時。持ち物等々の確認をするわけで。




「忘れ物、ありませんか。」


「ないです。」




あかねさんは、隣でじっとその会話を聞いていた。

あまりにもいつもより冷たい風が流れ込んでくるから、またそれに緊張感がある。




「華さん、いつもより緊張してますか?」


「んー…、してるって言ったらしてる、かも?」




7月。そんな季節で冷たい風が吹いて、寒気を感じるなんて体温がバカになってる。

そんなことを思っていると、あかねさんの口角が上がるの。

私はまた見て見ぬフリをするんだ。


私たちは暑い中、外を歩く。

9時20分。私たちは既に待ち合わせ場所についていた。

外の景色が見えて、綺麗な桜が春には咲き誇る。そんな駅で、私たちは待っていた。彼女を。




「…あの。」


「あ、初めまして。ゴーストアビリティーの黒沢華です。」


「清水、澄良です。」




見た目はボブカットの清楚なお嬢様。そんな感じがする。

でも、話してみれば、彼女にはもう心の闇が。




「本当に、政義に会えるんですか。」


「はい。」




彼女はどこか嬉しそうに、幸せを噛み締めた。


少し場所を移動して、私はあかねさんに合図を送る。

いつも通りの香りで、雰囲気が変わっていく。




「それでは、楽しいひと時を。」

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