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黒い影 ①
あの時、チャンスだと思った。黒沢華の元から黒木ひなたが消えたことを知って、弱みにつけ込むなら今だと。
「翡翠様。」
「どうされた?」
「黒沢華、黒木ひなたの場所が特定できました。」
「そうか。」
僕の敵。永遠に越せない、最大の壁。
ああ、絶望する顔を見たい。早く、早く。
…どうして、こうなったんだっけ。
「翡翠様、どうされましたか。」
「どうもしない。」
黒木ひなた。お前はどうして僕から離れてくれないのか。
僕は、お前が嫌いだ。きらい、だ__。
ああ、華の匂いがするな。あの声がこだまする。
“ ひーちゃん! ”
私が何をしたと言うんだ。何もしてないじゃないか。
私は、普通に生きてきたのに。
『黒木ひなた。』
『え、』
『お前は、どうしてここに。』
『私は…』
『ひなた、忠告しておく。______。』
見知らぬところに入っていた私は、なぜか声をかけられて。
でも、私は彼を知っている。
『…それは、わかってます。』
私が戻るべきところは…?