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ラベンダーの香り ⑥
カンカンカンカン。ヒールで必死に走る私は、そろそろ足が限界を迎えそうだった。
『大丈夫ですか。』
“ 大丈夫か ”
ひなたの声で頭に入って来る。どれだけひなたを欲しているのだろう。
こんなにも、私ってひなたのこと好きだっけ。
自分のことなのに、自分が一番わかってない。
やっと屋上にたどり着いて、後ろ姿に声をかける。
「坂口さん!」
「どうしてここに…。」
「終わったら声をかけてって…。」
「すみません、忘れてました。」
どこか涼しげな表情で、何かを決心したような顔。
私の隣で一言も発さずに、じっと見つめながらも、少し口元がにやっとしているあかねさん。
何か知ってるのね。とっとと言ってくれた方が楽。
「華さん。」
「はい。」
「桔花から伝言です。____。」
「え…、」
その伝言の内容もそうだけど、私はどうすればいいのかわからない。