ラベンダーの香り ⑤
これが初めて。また、桔花と会う方法を見つけた。
突然いなくなったんだ。道端で倒れて、そのまま。
喧嘩ばかりしていたけど、いざいなくなると寂しくて。
「桔花…?」
『あれ!?隼人!?』
「本物…なのか?」
『本物ですよーっと。双子なら私の姿くらい覚えとけ!』
当時のまま話して来るから、信じ難いけど信じるしかない。
だって本人だから。紛れもなく坂口桔花だから。
『実際、本人いなくなりましたけど…、どうですか。』
桔花がいなくなる直前、僕たちは喧嘩していた。最後に僕が桔花に向けた言葉は、「お前なんて消えてしまえ。」
その後、桔花は家を飛び出して行った。
でも、あの時はまさかこうなるとは思ってなかったわけで。
「あれは…、本心じゃない…。」
『うん、知ってるよ。』
「お前がいないと、やっていけない。」
『あれ?みちるさんは?』
みちる。僕の奥さん「だった」人。もう別れたんだ。
合わなかったらしい。何もかもが。
『まあ、私も苦手だったし、別にいいんだけど。』
毒を吐きながらへらっとしてるから。怖いんだよね。
でも、そこが桔花のいいところであって、僕の好きなところ。双子だから。以心伝心できるのも僕たちだから。
『ねえ、隼人。華さんに伝えてほしいことがあるの。』
「伝えてほしいこと…?」
『うん。それは_____。』
「…わかった。」
僕もそれを伝えたら、覚悟を決めようか。
**
「楓ちゃん。」
「私、そろそろ帰りますね。」
『…もう帰るんですか?』
「私、今のあなたと同じ空間にいたくないので。」
今日はいつもの倍だ。楓がこんなに噛み付くのも珍しい。
でも、私もそれは思う。
…早く坂口さん、帰ってこないかな。
ただただ望むばかり。
『…あの。』
「はい、何ですか。」
私もあかねさんと行動し始めてから、表情があまり表に出なくなった。
祖母並…かも?
『坂口さん、もう終わってあのビルの上です。』
指をさす方向の屋上には、確かに人影。
私の中で、何かが危ない、そう叫んでいた。