表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 2
47/180

ラベンダーの香り ③



意外とすんなり個人情報は集まったのにも関わらず、あまり許可が出なかったのは、桔花さんの方だった。





「交渉、できてない…?」


『全然乗り気じゃなくてですね…』


「双子の兄である隼人さんが、って言った?」


『もちろん、言いました!』





嘘、なのか本当、なのかわからない。


私は彼女を見る目がすっかり変わってしまった。あの日から彼女が私から離れることも多くなり、私はもちろんそれには触れなかった。


でも、今回ばかりは困る。しっかりと仕事はしてもらわないと。





「このままじゃ…」


『でも!出ないんですもの!桔花さんが!』





言葉をかぶせて、ゆるーく、かるーく、そんなこと言うから。


私もそろそろ限界が…





『限界が来ても、しょうがないですよね?こればかりは、本人の意思じゃないですか。』





にっこり笑ってそんなこと言うから。どこか恐怖を覚えつつ、私は何も言えなくなる。

そんな時、




「あなた、何を言ってるの。交渉すらしてないじゃないの。」


「え、」


『仕事放棄するなんて、いい度胸じゃない?』




その声の主を見れば、祖母と美奈子さん。今の私にとっては唯一の救い。




『私は、仕事放棄なんて…。』


「その口を一回閉じなさい。」




祖母が指を一回鳴らせば、口が閉じて開けないあかねさん。




『華ちゃん、怖いでしょう?紫さん。』


「あなたも一回閉じましょうか?」


『ごめんなさいね、紫さん。』




この状況もうまく飲み込めてないけど、2人が来てくれて、とりあえず助かった。それだけは言える。




「あ、あの…」


「華ちゃん。坂口桔花さんには、こちらが交渉しに行ったわ。」


「え、」


『それで発覚したのよ、あの子が行ってないって。』




様々な感情が交差していく。

信じていた分、裏切られていく感情、早くひなたに戻って来てほしい、なんて。




「華ちゃん、あなたは甘いのよ。もう少し厳しくしなさい。そして、人を見る目がなさすぎる。」


『紫さん、』


「でも、私は…っ、」


「口答え、するつもり?」





何も言えない。

今回の件は私が悪かった、ただそれだけ。それを認めてしまえば、何も起きないし、誰も悪くない。


早く連絡を入れなくては。





「…お手数をおかけしました。」


『待ち合わせ場所はパトリック教会。午後11時よ。』


「ありがとうございました…。」





帰り際に指を鳴らし、あかねさんの口元を戻していく。

私も私でメンタルをやられすぎて、何も考えられない。


姿が見えなくなると、安心したのか膝から落ちて行った。





『華さん、ごめんなさい…。』


「…たまには休みたくもなるよね。わかるよ、その気持ち。」





だから責められないの。私もそうだから。


こういう時ほど母に会いたくなるのよね、不思議と。でも、もう会えない。…いないから。




『すみませんでした…。』




謝る時間があるなら、突っ立っている時間があるなら。もっと他にやることあるでしょ。

…なんて、思えるはずもなく。


ただただ凍りついた空気の中、息を吸っていた。



楓ちゃんが見ているとも知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ