幼くして亡くした子の命 ④
何とか個人情報も集まって、交渉もしてもらって、可南さんに連絡を入れた。
「それでは、元あおぞら幼稚園の跡地で待ってます。」
『わざわざそんなところを選ぶなんて。』
「思い出がたくさんつまっているところなんで。」
夜の10時。これが約束の時間。
どうか、邪魔はしないであげて、二人の時間を。
「華さん。」
「あれ、帰らなくていいの?」
「終わったら、送ってください。家まで。」
「わかった。」
きっと、待っている間の時間、そばにいてくれるために、来てくれたのかな、って。
自意識過剰かもしれない。
でも、今はその優しさに甘えようと思う。
『色々準備しておきますね。』
「ありがとうございます。」
『ゆっくりしててください。』
眠りを誘う心地の良い声。ほんのりと香るゆずの匂いに、少しだけ鼻をくすぐられた。
時間になって、私たちは待ち合わせ場所に向かう。
こんな力を持ち合わせたせいで、私たちは普通に彷徨ってる方たちにも見えるわけで。
『気にしないで行きましょうか。』
私たちが待ち合わせ場所に着くと、もう彼女はいた。
「遅れてすみません。」
「いえ…」
「覚悟はできてますか。」
「…はい。」
その言葉で合図を送ると、あかねさんが指を鳴らす。
ひなたとは違うところ。それは、最初はゆずの香りがしてたのに、鳴らすと甘い香りが漂って、一瞬で景色が変わるところ。
これが “ 白と黒 ” の違いなのかな、なんて。
「それでは、楽しいひと時を。」
時間を伝えて、私たちはその場から離れた。