幼くして亡くした子の命 ①
都内のある幼稚園。ここに悲劇が訪れた。
いつも通りの平和な朝。
「おはようございますー。」
「あ、おはようございます!章汰くん、おはよう。」
「おはよう!せんせ!」
いつも元気な子も園にやって来て。
ああ、いつもの朝だ、なんて呑気に考えてたんだ。
私は休憩がてら、裏に入った瞬間、事件は起きた。
火災報知器が鳴り始めたのだ。
「青木先生!」
「え…」
「早く外に!」
でも、どこかで泣き声が聞こえる気が…。気のせいか。
私は、そう思い込んで外に出てしまったんだ。
「章汰くんがいない!」
「え…っ!」
もう建物は火の海。さっきの泣き声は、幻聴じゃなかった。
あの泣き声は章汰くんのだったんだ。
もう、救えない___。
**
段々暑くなり始めた6月ごろ。
ひなたの次と言われるパートナーの方がやって来た。
『初めまして、白山あかね、と申します。』
白山あかねさん。ひなたとは正反対な子だ。
彼女が来たことで、ひなたのことも段々薄れてきてはいる。
「黒沢華です。」
『ひなたちゃんのお願いで来させてもらいました。』
そう彼女は言うんだ。
ああ、この子ひなたの友人なんだ、って。
どこか安心しつつ、彼女の話に耳を傾ける。
『ひなたちゃんとは、親戚なんです、私。』
「そうなんですか?」
『はい!ひなたちゃんから私の名前、出ませんでしたか?』
出て来なかったな、あかね、なんて名前。
初めて聞いたその言葉に、どこか違和感を感じつつ。
『あ…、そろそろお客様ですね。』
「行きますか。」
二人での初めての仕事が、ここから始まる。