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Ghost Ability  作者: 紫乃
Season 1
38/180

心の距離 ⑧



「華さん!ひなたさん!」


『こんな時間に出歩いてていいのか、中学生。』


「だって、大事な日でしょ、今日は。」









たださよならするだけの日なのに。邪魔者がいなくなる日を、大事な日なんて。








「ひなたはさ、」


『なんだ。』


「私のこと、どう思ってるの。」








華ことをどう思ってるのか、そんなのわからないに決まってる。

私がどう思ってるか、なんて華の方がわかるはずなのに。








『どうとも思ってない。』







素直じゃないから何とも言えなくて。自分の気持ちもわからない、ほんとのことも口に出さない。


とんだ最低野郎だな、私は。









「ひなた、私はね、ひなたに会えてよかった。」










“ これだけは言えるの!ひーちゃん! ”











『そんなことを口に出すな!!!』


「…っ、ひなた…?」










私の記憶が邪魔をする。うろちょろしてるんだ、隅で。


はっ、と我に返った時には、ビクビクしてる楓と、驚いた様子の華。








『ごめん、』


「…ううん、大丈夫。ひなただもん。」









“ ひーちゃんのこと大好きだよ!ずっとずっと! ”



“ 僕ね、ひーちゃんを越せる存在になりたい! ”



“ 大丈夫だよ、絶対にひーちゃんを泣かせないから! ”










…もうやめてくれ。それ以上、私の元に来るのは。

頭がいたいんだ。…泣きそうなほど。










「ひなたさん…?」









何で泣いてるの。楓のその一言で、私が泣いていることに気がついた。


一筋の線が描かれている私の頰。それを拭ったと思えば、次から次へと大粒の涙が流れる。









『いや、これは…』








一人慌てていれば、華が急に抱きついて来る。










「ひなた。」









“ ひーちゃん! ”











『離れろ!』












華を、突き飛ばしてしまった。












「華さん!」













こんなに心が痛いことなんてあるんだろうか。

って、私に心はないのか。死んでるから。ゴーストだから。

…人間だから。











「…ひなた、急に何なの。」


『…もう、やめてくれ。』











それは少なくとも華に向けてじゃない。楓でもないんだ。


私の邪魔をしないでくれ。私はもう、普通でいたいんだ。








“ ひなたはすごいのね。 ”



“ ひーちゃん、褒められてるよ! ”



“ ひーちゃん!! ”







私のことを知らないくせに、何を言う。










「ひなた、顔青ざめてる。」


『ん…、わかっている…』









頭の中でずっと鳴り止まないにわとりの鳴き声と、「ひーちゃん」と呼ぶ男の子。


もう私を解放してくれ。華のために動きたいんだ。

生きてる奴らを救いたいんだ。









『お願いだから…』


「それは、どうかな。」


「え…」


『誰、なんだ…。』







私は、こんな中、華を置いていく。





・・



2、3ヶ月ほど前。ある学園で起こった事件で、命を絶った一人の少女。そんな少女にこんな決断をさせたのは、親友だった子でした。


少女はそれに気づいていながらも、友達でい続けた。

あなたは偉い。よく我慢したね。

私は、そんなあなたを誇りに思います。


次の世界では、幸せに、あなたの願い通り笑顔でいられる暮らしが待ってますように。


安らかに、お眠り下さい。






そして、ひなた。また会える日まで私は待ってます。

いつか戻ってきて、こうやって一緒に仕事ができるまで。私はずっと黒木ひなたのパートナーでいます。

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