心の距離 ⑤
・・
あの後、すぐに栞の元へと連絡が入った。リサも栞も会えるチャンスを手にしたし、これでもう私の出番はもうない。
『これが終わったら、私はもう行く。』
『もういいの、ひなたちゃん。』
『しっかりと話をし終えて、華の元に帰ったらな。』
終わったら、華のパートナーは次の人に変わる。
私はもう、用無しなんだ。
『ひなたちゃん…』
『任せたぞ。』
「ひなた!どこ行ってたの!」
『色々な準備だ。』
その一言で済ましてしまえば、華はもう何も言わない。
刻々と約束の時間が迫って来る。
私たちは時間になるまで、ずっと黙り込んだまま待った。
すると、暗闇から姿を現す栞。
「お待たせしました。」
「大丈夫ですよ。」
約束の時間から既に30分。それで大丈夫なんて、嘘をつくにも程がある。
「ひなた。」
ボソッと呟く華の声をしっかりと受け止め、私は言うんだ。
「覚悟はいいか」と。
指を鳴らして、そのまわりが変わっていく姿をじっと見つめていた。
「夜中の3時までです。時間は守ってください。」
「はい。」
「それでは、楽しいひと時を。」
あともう少し、それだけなのに。
どうしてこんなにも時は進むのが遅いのだろう。