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心の距離 ④
『お願いがあるんだ、岡本リサ。』
『……どちら様ですか?』
この交渉は私の仕事だから。たまたまするのを忘れていた私。
認めたくないが、時間稼ぎをしようとしていたのに気がついた。
離れたくない、そう言えたらいいのに。
でも、離れないといけないんだ、
あいつが、くるから。
『佐々木栞が面会を希望している。』
『栞が?』
『ああ。』
『嘘だ、栞が私に会いたいはずがない。』
『こんなところで嘘をつくはずがないだろ。』
少しきつい言い方をしてしまったかもしれない。
でも、そんな反省をしている暇もなくて。
『会って、話をするだけでいいんだ。』
『でも…』
『あとは、岡本リサの意思だけどな。』
微かに、“ 行きます ” の声が聞こえた。
ああ、来るのか。
これが本当に、私と華の最後の仕事だな__。