心の距離 ②
リサがいなくなる前日、私たちは放課後ショッピングに出かけたり、女子高生らしいことをたくさんしていた。
「これ可愛い!」
「栞に似合ってるよ!」
なんて言い合って。二人とも笑いながら写真撮ったり、プリクラを撮ったりして。
ずっと笑ってたのに。
朝、私が早く学校に着くと、屋上で誰かが立ってて。にこにこ笑いながら立っている少女と、止める教師たち。
私には、それが衝撃的で。今でも頭に残ってる。
「岡本!降りて来なさい!」
岡本、まさかと私は屋上を見た。あ…、リサだ。
昨日お揃いで買ったイヤリングをつけてて。完璧にリサだった。
「リサ…」
名前しか呼べなかった。他にも言いたいこととか、聞きたいことはたくさんあるのに、なんでだろう。
私はその場を見ていることしかできなかった。
「栞ー!」
「え、」
「私ね!これから落ちるんだ!」
え、そんなことを大声で宣言するなんて。
私が今、一番びっくりしてるんだよ、わかる?リサ。
「栞には、すごく感謝してる。」
一つ一つリサが言っていく言葉が、矢のように私の心を刺す。
あまりにも残酷なところ。
「リサ、一緒に…」
「私に決断させてくれて、ありがとう。」
決断。きっとリサが言う決断は、このこと。
私自身はリサと離れることが嫌でしょうがないのに、それを言葉にすることができない。
嫌なのに。まだ一緒にいたいのに。なんでなの。
「私はね!栞のこと大好きなんだよ!」
「私もだよ…」
「だから、栞は私のこと忘れちゃダメだよ?」
あの時のリサは、正直言って怖かった。狂気で溢れたような、そんな雰囲気を醸し出していて。
「さよなら、栞。」
一瞬、そう聞こえた気がした。
次の瞬間、彼女は屋上から姿を消した。鋭い音と共に。
私はもはや、言葉さえ出なかった。
後ろで笑ってる子がいるのにも気付かずに。