ゴーストアビリティーとは ⑦
『紫さん、あの話、してよかったの?』
「ええ。華ちゃんには、しておくべきかなって、思ったのよね。」
華ちゃんが跡取りって聞いたとき、正直不安でしかなかった。
あの子は、玲ちゃんや律ちゃんよりも大人しくて、自分の感情をあまり外には出してくれない。おまけに泣き虫さんで。
そんな子が一人でやっていけるか、って言われたら…、ね?
『それは、私も同じですよ。』
「美奈子さんのところのひなたちゃんも、いい子じゃないの。」
『ひーちゃんにも、色々あるんです。』
にこにこ笑いながらそう言った。
そう言えば、私はひなたちゃんが亡くなった理由を知らない。
『それは内緒です、紫さん。』
「なんで?」
『あまりにも、話せるような内容じゃないので。』
「そんなに、残酷だったの?」
『…それは、紫さんのご想像にお任せします。』
いつもは微笑みながらそう言うのに、今回ばかりは真顔で言うから、この件に関しては触れないでおこう、そう決めた。
『そうしておいてください。』
「そういうところまで、読んじゃダメよ。」
『もう遅いですよ、紫さん。』
「あら、遅いのね。」
二人で笑っていると、段々空の色が黒くなり始めた。
ああ、嫌な予感がする。“ 何が ”とは言わないけど。
きっと何かが私たちを、黒沢家と黒木家を襲う。
『…雨、降り始めましたね。』
美奈子さんにそう声をかけられて、雨がポツポツと降り始めていたことに気がつく。
「今、気がついたわ。」
私は段々激しくなってくる雨をじっと見つめる。
『この雨は、何を思うのでしょうか。』
「きっと、華ちゃんとひなたちゃんの心を清めるために、降ってるのでしょうよ。」
確信なんてないことを言って。
自然に勝てることなんてない。例え、私たちの力でも。
『あの子たちの未来は…』
「もう、見えてるのでしょう。」
あなたはもう見えているはずよ、美奈子さん。
あなたの力なら、全てが見えているはず。
過去も、未来も。
『そうですね。』
あなたが言うなら、それは合ってるのよね。
だから、私は…。
「もうそろそろ、だね。」
華も、ひなたも、紫も、美奈子も、誰も知らないところで、何かが動き出す予感。
「さあ、黒沢華ちゃん。実力を見せてもらおうか。」
大変だぞ、逃げろ、華。
こんなことしてる前に、察して逃げろ!
にげろ、ニゲロ。
あとは….、お前次第だ。