ゴーストアビリティーとは ⑥
「雨の匂いがするね。洗濯物、帰ったら入れないと。」
『そうだな。華は忘れ癖があるから。』
一つ一つの会話を、最後だと噛み締めている。
現に、私の隣にいる華は涙をこらえていて。
そんなに私との別れが悲しいか。そんなの、ないくせに。
…別に、私じゃなくたって。
『華。』
「…まだ、何かあるの。」
もう泣いていると言ってもおかしくない。
でも、
『華の味方は、私一人で十分だ。』
「うん、私もひなたの味方だから…」
『私は、お前が危ないことに巻き込まれようものなら、助ける。』
「うん、」
『そう思ってた、昔までは。』
「え、?」
そう、昔までは。今は、救い出しちゃいけない。
そういう時期だから。
大学生になった今、華が一人で乗り越えなくちゃいけない壁が、絶対に出てくる。
『お前が一人で頑張るところが…』
「わかった。」
珍しい。華が食い気味でそんなこと言うなんて。
さっきみたいに「嫌だ」って、「ひなたがいれば」って。言うのかと思ってた。
そう思って、やっとわかった。ああ、私が華に必要とされたいんだって。
でも、どこか信じられなくて。
「でもね、私はひなたにいてほしいんだよね。」
こいつはやっぱりバカだ。いなくなる私を、何としてでも引き止めようとしてる。
いなくなるってわかってるのに。それなのに。
やっぱり、好きなんだよね、こいつのこと。
『それなら、とっとと頭を冷やすことだな。』
「それは、私じゃなくて、ひなたでしょ!?」
『なんとでも言え。』
「そういうこと言っちゃう!?」
こういう痴話喧嘩が出来るのも、お前だけだ、華。