ゴーストアビリティーとは ⑤
あーあ、伝えてしまった。これが最後だなんて。思ってもいないことを。
でも、華と少しだけ距離を置いて、頭を冷やしたいのは本当。
できるのなら、他のやつに華を任せるなんてしたくない。
…でも、今の私では危険なんだ。
「…ひなた、私は嫌だよ。」
『もう決めたことなんだ。』
なんでこんなにも、素直に言ってくるんだろう。いつもはこんなに素直じゃないくせに。
私の気持ちが揺らぐじゃないか。
「全部急にやらなくても…」
『華とさよならするためだ。』
「(仮)でしょ?」
『私の頭が冷えるまでだ。』
「私がひなたに会いたくなったら?」
あぁ、全部が狂いだす。
『会わないよ。』
冷たくしても、冷たくしても、ダメじゃないか。
本当に彼女は私の全てを知っている。私の扱いを知ってしまっている。
伊達に10年以上一緒にいないな。
それと同時に雲の流れが速くなる。どこか嫌な予感がするのと、雨の匂いがする。
「…波、高くなってきたね。」
『…ああ。』
「空の色も、ちょっとずつ変わってきてる。」
帰ろうか。私の顔をじっと見つめてそう言った。
こいつはもう受け入れたのか、今さっきの出来事を。前までは全然受け入れられず、ギャーギャー泣いていたのに。
…ああ、前までは、だからか。こいつも、大人になったのか。
だから容姿も、性格も、ちょっとずつ変わってるのか。
わかっていないのは、私だな。華のことを全然見てないし、わかっていない。
なおさら離れないとダメだな。
たとえ、なにがあろうと。