ゴーストアビリティーとは ④
「ひなた!」
あの時の海が見える丘の上。砂浜に降りても綺麗に見えるのに、わざわざ丘の上にいたのは、私のことを思い出してくれてるのかな、なんて。
『…なんで、ここにいる。』
「こっちはいいの。なんで二ヶ月も…。」
『関係ないだろ、華に。』
やっぱり、冷たい。私がなんて言おうと、ダメなのかな、とか。嫌なことばかり考えてしまう。
でも、私の性格上、そう考え始めたら止まらない。
『とっとと帰れ。』
「…嫌だ。」
『なんで。』
「嫌なものは嫌なの。」
『このわがまま…』
「ひなたも一緒じゃないと!」
私がそう言えば、ひなたは目を見開いて私を見つめた。
でも、すぐにいつもの冷たい目になってしまう。
ああ、これで終わりなのかな。そんな気がしてきた。
『私がいなくても大丈夫だ。』
「ひなたがいないとダメ。」
『嘘をつくな。』
今のひなたとは話が噛み合わない。何を言えばいいのか、考えても答えは出てこない。
どれだけひなたと一緒にいたい、そう思っても伝わらないの?
心の中は、お互い読めるはず。
…ん? それなのに、どうして私は、ひなたの心が読めないの…?
『どうしてもだ。』
「なんで…。」
『だって、私のことはもうわからないだろう。』
「わかるよ!ひなたのことは私が一番知ってる!」
『じゃあ…』
“ この二ヶ月、私はどこにいて、何をしていた? ”
ぎくっ、としてしまった。ひなたはこの二ヶ月音信不通で、私の元から姿を消して、どこにいるかなんてわからなかった。
それなのに、それを答えろなんて。
『わからないんだろ。』
「私は…!」
『いい大人が、言い訳か。』
そんなこと言われてしまえば最後。私が言い返せることなんて何もない。
『私は一旦お前から離れる。』
「なんで…っ!」
『なんでも、何も。今のお前とはパートナーを組めない。』
「じゃあ、ゴーストアビリティーはどうなるの!?」
『…結局、お前はそればっかだな。大丈夫だ、安心しろ。他の奴にパートナーは頼んでおいた。』
“ 結局、お前はそればっかだな。 ”
その言葉が私の胸に刺さる。あまりにも深く刺さるものだから、きっともう取れないトゲ。
それを刺す相手が、まさかひなただなんて。
『少しだけ頭を冷やす時間が、お互い必要なんだと思う。』
「…いつから。」
『次の客がお前との最後(仮)だな。』
意外と早いじゃんか。
なんでそうやって勝手に決めちゃうの。なんで相談すらしてくれないの。
自然と一筋の涙が頬を伝った。